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第五章・3
シャワーを浴び、髪を乾かし、樹里は外へ出た。
「綾瀬さんにふさわしい、カッコいい男にならなきゃ」
まずは、スーツ。
綾瀬さんが着こなしているような、カッコいいスーツだ。
よく解らないので、老舗デパートの紳士服売り場へ行った。
パーカーにジーンズといったラフな身なりの樹里に、売り場のスタッフは怪訝そうに近づいて来た。
「何か、お探しですか?」
「あ、あの。どこへ出ても恥ずかしくないスーツを、ください」
飾らず素直な樹里の言葉に、スタッフは笑みをこぼした。
「ビジネススーツでよろしいですか? どうぞ、実際にご試着なさってください」
「ありがとうございます」
親切なスタッフは、スーツに併せてネクタイやシャツ、ベルトも選んでくれた。
靴下までシャツの色やネクタイのデザインに併せるといった小技に、樹里はひたすら感動していた。
鞄まで入れると、値段がさらに跳ね上がる。
スタッフは、樹里の顔色をうかがいながら着るものや小物を出していたが、全く動じないこの少年を不思議に感じていた。
「支払いは、カードでいいですか?」
「はい。お預かりいたします」
樹里に手渡されたカードに、スタッフは眼を円くした。
アメックスのブラックカードだったのだ。
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