41 / 105

第五章・4

「あの、スーツ着ていってもいいですか?」 「あ、はい。では、お召しになっていた服は、お包み致します」  この純朴な少年のどこに、そんな高額がひそんでいるのやら。  人は見かけによらないものだ。  全てを終えて、さよならをしようとすると、樹里が恐る恐る訊ねて来た。 「僕、カッコよく見えますか?」  これには、スタッフも顔をほころばせた。 「はい! とてもお素敵ですよ。後はよろしければ、ヘアスタイルを」 「解りました。ありがとうございます!」  少し寝ぐせのついた髪を触りながら去ってゆく樹里を、スタッフ一同微笑ましく見送った。

ともだちにシェアしよう!