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第五章・4
「あの、スーツ着ていってもいいですか?」
「あ、はい。では、お召しになっていた服は、お包み致します」
この純朴な少年のどこに、そんな高額がひそんでいるのやら。
人は見かけによらないものだ。
全てを終えて、さよならをしようとすると、樹里が恐る恐る訊ねて来た。
「僕、カッコよく見えますか?」
これには、スタッフも顔をほころばせた。
「はい! とてもお素敵ですよ。後はよろしければ、ヘアスタイルを」
「解りました。ありがとうございます!」
少し寝ぐせのついた髪を触りながら去ってゆく樹里を、スタッフ一同微笑ましく見送った。
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