43 / 105
第五章・6
「さて、樹里はどんな買い物をしたのやら」
彼のことを思うと、柄にもなく胸がわくわくしてきてしまう。
泣く子も黙る綾瀬組の組長が、一体どうしたことか。
「いかん、いかん」
深入りはしない。
そう心に決めて、これまで様々な男や女を囲ってきたはずだ。
どうせ奴らは、最終的には飼い主を裏切るものだから。
一つ咳ばらいをすると、徹はカードキーを滑らせた。
ドアが開き、室内は真っ暗……、のはずだった。
樹里には、先に寝るように伝えておいたのだから。
「おかえりなさい!」
考える間もなく、樹里が駆けて来た。
スーツ姿の樹里は髪形も整え、すっかり垢抜けている。
「……驚いたな」
「カッコいいですか、僕。綾瀬さんの隣に居ても、恥ずかしくないですか?」
「恥ずかしいどころか、むしろ誇らしいよ」
ともだちにシェアしよう!