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第五章・9

 徹は、声を立てて笑った。  この馬鹿正直なところの、何と可愛いことか! 「私と一緒にいる以上、時々は付き合ってもらうぞ」 「コーヒーなら、お付き合いします」 「お堅いなぁ」  じゃあ、と徹は樹里に顔を近づけた。 「綾瀬さん? あ、やせ、さ……」  そのまま、口を塞がれた。  深く繋がって来る、徹の唇。  忍び込んできた舌からは、ブランデーの香りがした。 「ん、っく。ぅん、ん、ぅ……」  ああ、いい香り。  これが、ブランデーの味。  いや、綾瀬さんの香り。  樹里は、酒の香りに、徹の香りにひどく酔った。  甘くて、ビターな大人の香り。  そしてちょっぴり、危険な香り。  せっかくのスーツが皺になってしまうほど、樹里はソファに寝かされてたっぷりとキスを貰った。

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