54 / 105

第六章・8

「あぁ! あぁッ! ヤぁあ、あぁ。んッ、ふ。うぅうんッ!」  徹の律動に併せて、樹里のさえずりが響く。  ぬぷッ、ぐちゅッ、とローションの鳴る音さえ、徹の耳には心地よく聴こえた。 「樹里、奥までたっぷり塗り込んでやるからな!」 「はぁあ! んあぁああ!」  待ち焦がれた徹の種が、樹里の最奥までほとばしった。  射精の圧で、内臓まで震えるようだ。 「あぁあ! 綾、瀬、さぁあんんッ!」  樹里は思わず、その両脚を徹の腰に絡めていた。  しっかりと脚で抱きつき、彼の精子を一つ残らず体内へ取り込んだ。 「ふぅ、あ。はぁ、あ。はッ、はッ、あぁあ」  長い射精を味わうように、声を上げ喘ぎ、震えた。 「喰いついて離れないな。そろそろ解放してくれ」 「あ……、ごめんなさい……」  徹に絡めた脚を解き、樹里はベッドにくたんと身を投げ出した。  その隣に、徹は横になった。 「どうだった。感想は?」 「……凄い、です」  樹里の呼吸が整い、身体の痙攣が治まるところを見計らって、徹は彼に腕枕をしてあげた。 「絵を描くなら、空き部屋をやろう。アトリエにするといい」 「ありがとうございます……」  なぜだか、涙が一粒こぼれた。  嬉しくて、幸せで。  そんな樹里の、涙だった。

ともだちにシェアしよう!