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第七章 悲しい発情
早朝から接待ゴルフに行く、と出かけた徹を見送り、樹里は体の異変を感じていた。
「何か、熱っぽいみたい」
息苦しく、動悸がする。
肌が、かっかと火照って来る。
午前中の出社を午後からにして、樹里は事務所近くの医院を訪ねた。
『受付の時に、この名刺を渡しなさい』
そう言われて貰った、徹の名刺。
病院は他にもあるのに、なぜかこの医院で受診するようにとも言いつけられていた。
「何でだろ。でも、綾瀬さんのおっしゃることだから」
間違いは無いよね、と何の疑いもなく、待合室に座る。
しかし樹里がΩと言うことで、問診や血液検査が行われ、長い時間待たされた。
「水原さん、どうぞ」
ようやく診察室から呼ばれ、樹里は医師・毛利(もうり)に出会った。
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