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第七章・2

「発情抑制剤が、効きにくくなってるな」  薬は毎日飲んでいるか、との質問に、樹里は以前通っていた病院から処方されていた発情抑制剤を出して見せた。 「これを、毎晩1錠飲んでます」 「あんた、成長期だからね。もう、それじゃ効かないよ」  それに、と毛利はカルテから目を離さないまま不平を言うようにこぼした。 「綾瀬の新しいペットだな? 毎晩たっぷり可愛がられてるんだろう。フェロモンも、強くなるよなぁ」  新しいペット。  その言葉に、樹里は反応していた。 「あの。『新しいペット』って。以前も、綾瀬さんは誰かを……」  そりゃあ、まぁ、ね。 「イケメン・金持ち・ヤクザの組長。これだけカードが揃ってりゃ、より取り見取りだぁな」  毛利はペンを指でいじりながら、樹里に警告のように言い放った。 「ペットは飽きたら捨てる。そういう男だ、あいつは」

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