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第八章・4
翌日の9時、樹里が社長室に現れた。
「おはよう」
「おはようございます……」
俯き、小さな声で朝の挨拶をする樹里。
徹はにこりと笑うと、声をかけてやった。
「昨夜は、最高に悦かったぞ」
「申し訳ありません!」
ごめんなさい、許してください、と訴えるところを見ると、どうやら記憶はあるらしい。
「まさか樹里に、あんな一面があったとはね。しっかり覚えたからな」
「綾瀬さん、怒っておられませんか?」
「怒るもんか。散々いい思いをさせてもらったんだからな」
それより、と徹は意地悪を言った。
「樹里も覚えているんだな? 昨夜の恥ずかしい自分を」
「勘弁してください……」
耳まで真っ赤になって、樹里はすっかり下を向いてしまった。
発情してたとはいえ、何ていやらしいことを僕はやっちゃったんだ!
自分の行動を、放った言葉を思い出すと、消えてしまいたくなる。
しかし、徹は優しかった。
そんな樹里を責めもしないし、否定もしなかった。
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