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第十章 愛すること、愛し合うこと
表向きは内科だが、毛利は外科医の腕も持っていた。
そしてそれは、裏の腕。
綾瀬の事務所のように、表沙汰にしたくない怪我人が出た場合に治療を引き受けているのだ。
「まさか、ペットちゃんが運び込まれるとはな」
そしてそれは、飼い主の徹をかばってのものだという。
「大した忠義だよ」
『綾瀬さんは、そんな人じゃありません』
樹里の、あの言葉が、思い出された。
「確かに、そんな人じゃなかったな。樹里ちゃん」
いや、そんな人じゃなくなった、と言う方が正しいか。
『私の血、全部くれてやる。だから、絶対に助けろ!』
徹の、あの言葉が思い出された。
「俺の腕に掛けて、必ず助けてやるからな。綾瀬」
あそこまで言うからには、これはおそらく。
いや、きっと、愛だ。
「鉄血の綾瀬組長が、愛を知る日が来ようとは、な」
よし、後は縫合。
樹里の手術は、終了した。
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