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第十章・4

「樹里、具合はどうだ?」 「綾瀬さん!」  樹里は三週間で、半身を起こせるまでに回復していた。  それでも徹は、滑稽なくらい樹里の身を案じた。 「動くな、じっとしてろ。起きても大丈夫なのか? 横になった方が、良くないか?」 「もう、すっかり平気です。毛利先生のおかげです」  それから、綾瀬さんのおかげです。  そんな風に、樹里は徹の姿に頬を赤らめた。  毎日、時間を作ってはお見舞いに来てくれる綾瀬さん。  接待ゴルフも飲み会も、ジム通いまでやめて、僕の元へ通ってくれる。  満たされた気持ちになる。  幸せな気持ちになる。 「今日は、メロンを持ってきてやったぞ。赤肉の、夕張メロンだ」 「外からの差し入れは禁止だと、何回言わせるんだ!」 「何だ、毛利。いたのか」  お前の分も持ってきた、と大きなメロンを差し出す徹に、毛利は苦笑いした。 「今度だけだぞ」

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