81 / 105
第十章・4
「樹里、具合はどうだ?」
「綾瀬さん!」
樹里は三週間で、半身を起こせるまでに回復していた。
それでも徹は、滑稽なくらい樹里の身を案じた。
「動くな、じっとしてろ。起きても大丈夫なのか? 横になった方が、良くないか?」
「もう、すっかり平気です。毛利先生のおかげです」
それから、綾瀬さんのおかげです。
そんな風に、樹里は徹の姿に頬を赤らめた。
毎日、時間を作ってはお見舞いに来てくれる綾瀬さん。
接待ゴルフも飲み会も、ジム通いまでやめて、僕の元へ通ってくれる。
満たされた気持ちになる。
幸せな気持ちになる。
「今日は、メロンを持ってきてやったぞ。赤肉の、夕張メロンだ」
「外からの差し入れは禁止だと、何回言わせるんだ!」
「何だ、毛利。いたのか」
お前の分も持ってきた、と大きなメロンを差し出す徹に、毛利は苦笑いした。
「今度だけだぞ」
ともだちにシェアしよう!

