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第十章・6

 樹里の決意が実ったのか、退院の日はほどなくしてやって来た。 「迎えに来たよ、樹里」 「ありがとうございます、綾瀬さん」  樹里をアウディに乗せ、徹は毛利と固く握手を交わした。 「もう、樹里くんをケガさせたりするなよ?」 「肝に銘じておく」  車に乗り込み、医院を後にして、徹はそのままマンションへ向かった。 「ああ、やっぱり家が一番落ち着きますね」  日の差し込むリビングで伸びをする樹里に、徹は嬉しくなった。  ここを、自分の家、と認めてくれているのか。 「樹里、欲しいものはないか? 食べたいものとか」 「お願いしても、いいですか」 「退院祝いだ。何でも好きなものを言っていい」  じゃあ、と樹里は下を向いた。 「抱いて、ください」 「樹里」 「入院中、ずっと綾瀬さんのこと考えてて。欲しくてたまらなかったんです」  そんな樹里に、徹は両腕を開いた。 「嬉しいな。私と同じことを考えていてくれたとは」  綾瀬さん、と樹里は腕の中に飛び込んだ。

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