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第十一章 二つの告白

「樹里、口を開けて」 「んぁ、はぁ。こう、ですか?」  薄く開いた唇を割って流し込まれたのは、ブランデー。 「んん……ッ」 「美味いか?」  徹に口移しで美酒をもらい、樹里は微笑んで頬を染めた。  情事の合間に時折くれる、気付け薬だ。  時は過ぎ、樹里は20歳になっていた。 「もう、終わろうか。明日も、絵を描くんだろう?」  体力を残しておいた方がいい、との考えからくる徹の思いやりだったが、樹里は首を振った。 「もう、5点も描きました。少し創作からは離れて、充電したいんです」 「そうか。ならば」  ぐいっ、と徹は腰をやった。 「あぁんん!」 「もうしばらく、付き合ってもらおうか」  すっかり慣れ親しんだはずの、樹里の身体。  だが、飽くことはない。  そのしなやかな抱き心地は、行為のたびに徹に新鮮な悦びを与えていた。

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