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第十一章・4
朝の徹は、夜の名残を微塵も見せない。
いつもスーツをぴしりと身につけ、社長室で新聞を読んでいる。
「おはようございます」
「おはよう」
樹里は、まだまだ修行が足りない。
スーツを着てはいるが、昨夜の徹を想い、身を火照らせながらコーヒーを淹れる。
「昨日の綾瀬さん、凄かったな」
あの唇が、舌が、歯先が。
手のひらが、指先が、僕をいじめた。
髪すら使って、官能を引き出した。
そして……。
体内に収められた彼自身を、吐き出された彼自身を想うと、身体の奥がじんじんと痺れて来る。
「綾瀬さん……」
身をよじって、劣情に耐えた。
コーヒーが落ちきってしまうまで、堪えた。
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