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第十二章・5

 僕の絵。  僕の描いた、絵。  温かく落ち着いた色彩のたくさんの円は、僕の綾瀬さんへの想い。  そして、綾瀬さんが僕にくれた、真心。  ランダムに鋭く走らせた閃光のような渦は、時々どうしようもなく熱くなる心。  そして、綾瀬さんがこの身体に刻み込んでくれた、エロス。 「僕の初恋も、綾瀬さんです。この絵に、その思いを託したんです」 「初恋は実らないというが、とんだ迷信だったな」  二人で、唇を重ねた。  温かな熱を、吐息を交換し合った。 「樹里、好きだ。愛してる」 「綾瀬さん、愛してます」  穏やかな、だが長い長いキスを、交わした。

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