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第十二章・6
「ロバとイヌとネコとニワトリの覗き込んだ家は、なんと盗賊たちの住処だったのです……、って。あれ?」
寝物語を語って聞かせる樹里の耳には、やすらかな寝息が聞こえていた。
「また、最後まで聞かずに眠っちゃった」
にっこり微笑み、樹里は子ども部屋をそっと後にした。
リビングへ入ると、そこにはブランデーを傾けながら徹が待っていた。
「湊(みなと)は、もう寝たのか?」
「お昼にいっぱい鬼ごっこしたからかな。すぐに眠っちゃいました」
5年の月日が、流れていた。
樹里と徹は誓い通り結婚し、二人の間にはαの男の子が生まれた。
両親の愛情を受け、すくすくと素直な良い子に育ってくれた。
「でも、5歳で子ども部屋なんて、少し早くないかなぁ。まだまだ甘えたい盛りですよ?」
「自立心を養うためだ。私だって、考えてのことだよ」
二人で寝室へ向かいながら、そんな話をした。
親子3人で川の字になって眠る日々を、徹は湊が5歳になった時を境に、やめさせた。
今では元の通り、樹里と二人で大きなベッドに寝ているのだ。
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