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第20話 似てる二人

 それから、二人が日本の地を踏んだのは数か月後の事。  空港に降り立つと、こっちだ、と声をかけられる。そこには、サングラスの長身の男。声はよく知っている声に似ている。  雄大だ。あらかじめ、雄大には帰ることを伝えていたからか、迎えに来ると言っていたのだ。  この数年、雄大と誠実の仲は前のようにとはならないが、それなりに改善されたと思う。  ホテルへと泊まる予定だが、雄大と食事をすることになっている。  同窓会に出席するという雄大は、匠たちが帰国する日に合わせて休暇を取ったらしい。  奥さんである、幸助は大切だが、誠実も匠も幸助とは違った意味で大切だということ。  ホテルにまずチェックインしてから、荷物を置いて出かける。  久しぶりの日本だが、あまり変わった印象もなく、懐かしいなと思うばかりだ。 「あっ、匠ちゃんこれどう?」  大型ショッピングモールへとやって来た三人は、ふらりと目的のないまま、店内を見て回る。  誠実が、ふらっと入ったのは、ゴシック系の店。主に服飾系を売っているが、あまり匠の趣味とは言えない。  どちらかと言えば、誠実の趣味だ。  誠実が匠に進めてきたのは、割と大人しめの黒いTシャツ。白で十字架がプリントされている。  割とごてごてしてなくて、好みかもしれない。 「いいんじゃないか?」 「じゃ、これ買って帰ろうか」  誠実はサクッと買い物をしてしまう。  免税とかはあまり関係なく買っている。  無駄に、誠実に至っては特許料などもあって、何もしてなくても金が入ってくるから、金はある。  それに、匠も誠実も浪費家ではないから、溜まるモノはたまっていく。  ゆえに、使いたいときはたくさん使う。溜まるだけたまって、使い道がなくなったら困るしな。  暫くそうして買い物をして、荷物になりそうなものは全てあちらの家へと送ってもらうことにして。  がりがりと書いた向こうの住所に、店員はとても面白い顔をしていた。驚いたって感じの。  まぁ、匠も誠実も日本人っぽい顔立ち、そうじゃなくとも東洋人という感じの顔立ちはしているから、余計に。  それに、話している言葉も日本語だしな。  買い物を終え、雄大が予約したという店に向かう。  美味しい、牛肉の店。個室ありの、お高いところ。  個室だが、目の前でシェフ自ら焼いてくれるっていう本当にVIP対応の店。  誠実もそうだが、雄大もなかなかにセレブである。  三人、匠を真ん中にして座り、コースを頼んでじっくりと話をしながら料理を楽しむ。  牛肉は、臭みもなく、むしろうま味が凝縮されているような味。  美味しい、と匠が素直に口に出せば、そりゃよかったな、と雄大が言う。  誠実も、よかったねぇ、と匠の頭をなでる。  匠はなぜ、いま自分が子ども扱いみたいなものを受けているのか、と疑問に思うがとりあえず美味しいから流そうともう一口、それを口に運んだ。 「そう言えば、よく来る気になったな?」 「ん?あぁ、だって匠ちゃんがこっちに来たそうにしてたから」  相変わらず、誠実の世界は匠で回っていると、雄大は苦笑する。 「……俺、そんな顔してたか?」 「してたしてた。まぁ、だから久しぶりに日本に来るのも悪くはないかなぁって思ったんだけどね」  ひょいっと焼きあがった肉を口に入れながら誠実は言う。箸の使い方は綺麗なんだがな。  もっと味わって食えといったところで、ハイハイ、と流されるのがおちだから匠は言わない。 「じゃなかったら、誰が帰ってこようなんて思うの?」 「そんな帰ってきたいと思った覚えはないけど……ただ、なつかしいなとは思ったけどな」 「だからじゃない?」  と今度は野菜を口に放り込む誠実。さすがに、食べ方が汚い、と匠が注意した。  箸をプラプラと動かしながら言うものだから余計に。  さすがに、行儀が悪いことは認めているのか、誠実はしぶしぶ居住まいを直す。 「まぁ、アルファにとって番が第一なのは認めるけどな」 「……お前らは変なところで双子だよな?」  両側の食べ方がそっくりなのを見て、匠が笑う。  それ以外にも考え方も、基本になる部分は同じなのだろう、だから誠実の事を雄大は理解したくないと思いつつ理解できる。  本人はすごく嫌そうだし、そこまでの執着はない、というが。

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