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第21話 貴方が一番
食事を終えた後、雄大とはホテルで別れた。
そのホテルの地下ホールで同窓会が行われる。
「ここのホテル、朝のブッフェも美味しかったし、期待できるかもな?」
まぁ、それなりに有名どころのホテルである。
料理すらネットの宣伝や、雑誌に掲載されるほど。なので、不味いわけはないのだが。
でも、人によって味覚は異なる。
絶対外れはないだろうという料理だけをとり食べた二人だが、その外れがないにしても、美味しかった。
目の前で焼いてくれる、ふわふわのオムレツや、ドレッシングの豊富なサラダ。
スープも何種類か置いてあり、野菜ジュースやトマトジュース、牛乳なども完備されていた。
さすがに、コーヒーだけはこだわりがある。だから選ぶ候補にも入れなかったが。
「そうだねぇ……」
「不満か?」
「うーん、十分美味しいんだけどねぇ。帰って、匠ちゃんの手料理が逆に食べたくなったかなぁ……」
ボンヤリと告げる誠実に、その意味を理解して匠の顔がほんのり赤く染まる。
馬鹿か、と匠が誠実の肩をたたくと、誠実は叩かれたことを気にすることなく、にへら、と笑った。
会場について、受付に招待状を渡し、名前を書き込むと、とても驚いた顔をされる。
そんな受付に、会費を渡しつつ、しぃーっと人差し指を唇に当てながら、匠はウィンクをした。
内緒ね?と小さな声で言えば、ほんのりと頬を赤く染めながら、中へと入れてくれる。
中に入れば、誠実とはいったん分かれることになっていた。
少ないとはいえ、誠実にも友達や知り合いはいるし、匠の友達と誠実の友達はタイプが違う。
後で合流することにして、ベータの頃の友達が集まっている場所へと足を向けた。
「よう、久しぶりだな」
そう、声をかければ一瞬わからなかったみたいだが、お前、広瀬か?と問いかけられて匠はにやりと笑った。
「何だ?ダチの顔もわからなくなったのか?」
「いや、皆どこかしら変わったとは思ってたけど……かわりすぎだろ」
ゲラゲラと笑った一人に背中をバシバシたたかれる。
立食形式のそれは、気軽に歩き回れて食事もでき、とても優雅だなぁ、と感じた。
もちろん、普通の学校じゃなかった分、成功者も多く、こう言ったお金をかけた形式ができるのだが。
「お前、今どこにいるんだよ?」
「俺?俺は今、国外だな」
『外国!?』
数人の声がそろう。
うるさくて耳をふさぐポーズをすれば、あぁ、悪いと違う一人に言われる。
「へぇ、何してるの?」
「ん?あぁ、誠実のサポートだよ」
間違ったことは言ってない。
誠実を、私生活でサポートしている。もちろん、番としても、幼馴染としても。
「うへぇ、お前まだあの変人と付き合ってるのかよ?」
舌を出して吐く真似をする友達に、苦笑する匠。
誠実は、本当を知らない人から見れば、変人なのだろう。
高校の時から、浮名さえ流していたし。
俺の友達はベータが多いが、普通のアルファではない誠実はどこか、崇拝の対象外になっている気がしてならない。
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