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第22話 告げること
主催者、まぁ同窓会長や幹事の挨拶、あとは担任だった先生数名からのあいさつなどなど、立食しながらその話を聞いたり、時には聞かず交流を深めたり。
匠は、久しぶりに会うメンバーと盛り上がっていた。
「ん?そう言えば、浜中は結婚したのか?」
同級生の左手薬指に嵌っている指輪を見て、匠が問う。
首を傾げると、はぁ、と彼方此方からため息が上がった。
「去年な。それから、横溝も結婚してるぞ、一昨年」
「えっ?マジで?」
匠の肩に手をまわし、大げさにため息を吐いた浜中。
そして、回した手で、ほれ、と横溝の左手薬指を示す。
本当に、結婚指輪らしきものが嵌っていて驚いた。
「お前に招待状送っても、宛先不明で戻ってくるしよ~?あと、メルアドとケー番変えただろ?」
お前、メッセージアプリもしてなかったし、と大々的にため息を吐かれた。
どうにも、匠に連絡がつかなかったらしい。ここにいるメンバーは、誠実ともコンタクトは取れないだろうし。
あー、と匠は困ったような顔をしてほほを掻き、ごめん、と素直に謝った。
「ちょっとあって、全部向こうに行ったとき、変えたんだよ。それに、俺から連絡取れればいいと思って」
教えなかったと言えば、周りにいた友達全員がとても何とも言えない表情になる。
匠は少し首を傾げた。
「それってさ、もしかしなくてもあの変人君のため?」
「んー……そうって言えば、そうなのか?」
よくわからん、と匠は首を傾げた。
匠はオメガになったことで、両親にも狙われていたから。
連絡がつかないようにしたかったのは、寧ろ自分のためだとも思っている。
「余計なお世話かもしれないけど、あの変人君の事は忘れたら?」
「は?」
誠実の話題になり、途端に冷たい空気を醸し出す匠。
知っている友人は、ため息を吐き、知らない友人はびくりと体を震わせた。浜中は、匠の肩から腕を外し、向かい合う。
その表情は、いつも困ったような顔をしながらも優しい顔をしていた匠じゃないみたいに、冷たく醒めた表情。
「だって、おかしいだろ!アイツのために、人生の大半持ってかれてんだぞお前」
「別に俺はそうと思ってないけど?誠実についていくことも、傍にいることも全部俺が望んだことだ」
「それがおかしいって言ってんの!お前はベータなんだから、アルファになんか何れ捨てられるのが落ちだ!そうなる前に、捨ててしまえって言ってんだよ!!」
それが、匠を思っての言葉だとはわかってはいるが、匠は素直にありがとうとも言えず、はぁ、とため息を吐いた。
あぁ、そうか、と匠は少しネクタイを緩めて言う。
「俺、オメガになったんだよ」
はぁ!?と周りに迷惑なくらいの声量が匠に向けられる。
匠は、にっこりと笑ったままだ。
「どどど、どういうことだよ?」
「どうもこうも、会社勤めしている時にオメガになってそのまま誠実と番になった」
これがそう、とボンドバイトの痕を見せる。
それは、オメガだという証。消えない傷。
そこまで興奮していた面々は、はぁ、と長い溜息を吐いた。
「先に言えよ、そういうことは!」
「悪い。でも、デリケートな問題だってわかってるからな」
オメガという性が必ずしも受け入れられるはずがないのは、よくよく知っている。
匠の親が、正にそうだったのだから。
その時の事件、まだ母親は病院の中だ。生きてはいるが、本当に生きているかと言われれば微妙な状態。
自分で息をすることも、寝返りを打つことすらできない。誠実が、頭を強く何度も打ち付けたせいだ。
憔悴してるとは雄大に匠の父の状況を聞くが、それでも帰ってきたいとも匠は思ったことがない。
所詮、家族<誠実なのだ。誠実と会えなくなるぐらいなら、親に会えなくてもいい。
「オメガになったことで、嫌うかよ~。ひでぇな、友達ぐらい信じろ」
ぼすっ、と肩を叩かれてわるい、と苦笑いすれば、にやりと笑った面々が、匠の周りに集まって、たっく、とか言いながら匠を一発軽く殴っていく。
彼らなりの制裁だと知っているから、匠はそれを甘んじて受け入れた。
けれども、匠がそこでオメガとばらしたことで、気にくわない人もいたのだろう。
大きく聞こえるような声で、やだやだ、とあざけわらう声がした。
「オメガが堂々とこんなところに居るなんて!端にでも寄ってなさいよ」
どこにでもそんな人間がいるものだと、匠は気にしてなかったが、周りがピリピリしだしたのが分かる。
オメガ否定派と肯定派だ。
元々、人間の思想だ。自由なものだが、他人に迷惑をかけるとはいただけない。
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