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第7話

   *  その後もちょいちょいものがなくなった。新品のタオル、ハンドクリーム、洗濯して小さくなった靴下、明治にもらったお菓子。忘れたころに洗濯物にタオルやTシャツが紛れていて、干すときに気づく。  ちゃぶ台に置いた爪切りが箪笥の上で見つかったこともあれば、詰め替え用を買ってはいたが、詰め替え忘れたシャンプーがいつの間にか満たされていたり。朝食に卵は2つしか使わなかったはずなのに、ごみ箱には4つ分の殻が入っていたりする。 「アッハッハッハ。そりゃアレだな」  ついに不安になってヨシさんに相談した。 「アレ?」  ごくりと唾を飲む。 「アレだな」  左側に座ったトシさんが繰り返す。「こんなじーさん」と言われたのがショックだったのか、あれ以来老人は徳重を挟んで座る。 「アレ?」 「…アレ」 「アレ、アレ」  ステレオでアレアレアレが聞こえる。早く思い出せや! 出ないんならなんかヒント出せや! 「……おかっぱのぉ」 「河童っすか?」  違う違うとヨシさんが首をふる。 「子供だよ、おかっぱの。赤いちゃんちゃんこで」 「紫でねべか?」 「赤だぁ!」  紫だ赤だ、左右から聞こえる。どっちでもええべな! 「追い払うと食中毒になるだで」  ヨシさんが怖いことを言う。 「妖怪ですか?」  フン! と鼻息が聞こえトシさんが言う。 「追い出すと富が傾くとかて」  あ、それをきいてアレが分かった。 「座敷童?」  ステレオでああーああーと聞こえた。  お供物だと思って、物がなくなっても怒らずにいた方がええ。ヨシさんにそういわれて多めに食べ物をもらうようになった。  なくなっても差しさわりのないリンゴやみかんを山のように置いておくようにした。なるほど、時々激しい家鳴りがするのも、押し入れから物音がしたような気がするのも、そいつのせいかもしれない。

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