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5th 桜と空の間

俺が初めてこの大学病院に赴任した日。 病院の敷地にある桜の木に登って、空を眺めてる男の子がいた。 高校生くらいかな? 線が細くて、色が白くて、唇が赤くて。 キレイな子。 パジャマにカーディガンを羽織ってて、入院している子なんだろうな、って容易に想像はついた。 ただ.... 桜の花が舞い落ちる中、その子はすごくツラそうな顔をして空を眺めていた。 俺はその姿にドキッとして、思わず見入ってしまう。 「ユウーっ!なんでそんなとこに登ってんのーっ!」 病院の建物から、ナースが3人、その子がいる桜の木に走ってきた。 ユウって、いうんだあの子。 ユウは、一瞬〝やばっ!〟って顔をした。 でも、すぐイタズラっぽく笑う。 「だって、風が気持ちいいんだもん、ここ」 「ただでさえ入院してんのに、さらにケガとかしたらどうすんの!?」 「点滴したらしばらくできなくなるじゃん。こういうこと」 「いいから早く降りておいで!ユウ!」 ユウは、ふわっ笑うと、木の上でフラッとした。 ....落ちる!! 「危ない!!」 ナース達の悲鳴に近い声が上がる。 そういう俺もヒヤッとして、思わず足が一歩出てしまった。 「なーんてね!ビックリした?」 ワザとかよ....。 俺は小さく息をついた。 ユウは楽しそうに笑うと、桜の木から軽く飛び降りる。 「ユウ!心臓に悪いからやめて!!いい加減怒るよ!」 ユウはナース達にがっしり腕を掴まれ、引きずられるように建物の中に入っていった。 ツラそうな顔をしたユウが、本当のあの子なのか? ニコニコ楽しそうに笑うユウが、本当のあの子なのか? 俺は気になってしょうがなかった。 「あぁ、あの子ね。再生不良性貧血なんだよ」 先輩医師の高田は、そう言った。 同じ大学の先輩で、面倒見も良くて、医師としての腕も良くて、俺は尊敬している。 ....口に出すと調子にのるから、言わないけど。 「結構、重症化してからうちに来たから。薬剤治療もうまく定着しなくてね。1番効果があるのは骨髄移植なんだけど、ドナーがまだ見つからないんだよ。だから造血因子の投与をして、輸血と薬剤治療を交互にしてる段階なんだよね。まだ若いから、ツライよね」 俺は、さっきのユウのツラそうな顔を思い出した。 「神崎、気になるの?」 「あ、いや。そうじゃなくて」 「あの子、この病棟だから、担当医に押したげようか?」 「え!?担当医なんてまだ早いよ!」 って、言ったのに。 俺は、いつの間にかユウの担当医になっていた。 ユウの薬剤治療が始まる。 腕は紫斑だらけで痛々しかった。 血管が細いのか、ナースも一発で針を入れられずにいる。 ユウはその間、ずっと目を瞑っていた。 薬剤投与時間は12時間、長い....。 〝なんでもないよ〟って顔しながら....我慢してるんだ、きっと。 「ユウ、何かして欲しいことある」って言うナースの声に、ユウは目を開けて軽く笑った。 「ううん。大丈夫。ちょっと寝ていい? 気持ち悪くなったらナースコールするから」 ....目にはうっすら涙が溜まっていた。 ひと段落ついて、俺はユウの様子を見に行った。 ユウは顔をしかめて、涙を流して寝ていた。 俺は胸が苦しくなった。 1人の患者に深く感情を入れてはいけないのは、分かってる。 でも、なんか放っとけなかった。 ....初めて会ったあの日から、俺はユウのことが気になって仕方がなかった。 ✴︎ 僕は、この時間が1番キライだ。 薬剤の点滴を受ける長い時間。 僕は目を瞑った。 一体何回目になるんだろう。 「今度は大丈夫」 って、言葉も何回聞いたか分からない。 大丈夫って言われて、大丈夫じゃなくなって。 いつもその繰り返し。 点滴用の太い針を何十回って刺された僕の腕は青アザだらけで、看護師さんでさえ、もうどこに針を刺していいか戸惑うくらいだ。 加えて血管も細くて、たまに薬剤が漏れ出して....痛い。 「ユウ、何かして欲しいことある」 看護師さん達は、いつも優しく僕に気を使ってくれる。 ....たまに、怒るけど....。 「ううん。大丈夫。ちょっと寝ていい? 気持ち悪くなったらナースコールするから」 無意識に笑顔を作っちゃう。 本当は....痛くて、つらくて、早く1人になりたかった。 僕の病気は 原因不明で起こる血液の病気らしい。 治療方法は、今僕が受けている薬剤投与か骨髄移植。 でも僕の場合、薬剤治療でなかなか改善がされなくて、輸血と薬剤投与の繰り返し。 骨髄移植も両親や親戚とは型が合わずにドナー待ち。 高校に入ったくらいから、なんとなく息切れをするようになった。 はじめは、体力が落ちたかな?位にしか考えてなかったし、たまにおこる立ちくらみも、全然我慢が出来る範囲だったから。 次第にそれがひどくなって、クラクラしだして、ある日僕は倒れた。 気付いた時には、重症になっていた。 高校に入ったら、いっぱいやることあったんだけどなぁ。 学校にも全然行けてないし、やることも全然叶ってないなぁ。 そんなことを考えてると、深い眠気が襲ってきた。 次、目を開けることができるかどうかわからない恐怖が僕にのしかかる....。 僕は、どうなっちゃうんだろう....。 ....こわい.... 「....ユウ?木南ユウ?大丈夫?」 僕は聞きなれない、低く響く声で目が覚めた。 目を開けると、瞼の中に溜まっていた涙が流れ落ちる。 「....あっ」 僕は自分の涙にビックリして、思わず声を上げてしまった。 僕に声をかけた、この白衣をきた人もびっくりした顔をしている。 新しいお医者さんかな? ずいぶん若い感じがして、背が高くて、かっこいい。 看護師さん達にめっちゃモテそうだ。 「ごめんなさい....びっくりさせちゃった?」 思わず、謝ってしまった。 「なんで謝るの?」 その人は優しく笑うと、僕の涙を拭ってくれた。 それから、僕の点滴をしていない方の右手をぎゅっと握る。 僕の冷たい手が、その人の手の温かさで一瞬温かくなった。 「長い時間の点滴って、ツラいんじゃない?」 ずっと隠してた正直な気持ちを突かれて、僕は目を見開いしまう。 「ツラい時は遠慮なく言って....点滴は止めてあげられないけど、気を紛らせることはできるよ」 僕はその言葉に、思わずクスッと笑ってしまう。 「点滴は止められないんだ」 「....よかった、笑ってくれた」 「新しい先生?」 その人は、歯を見せて笑うと頷いた。 「俺、神崎諄って言うんだけど、神崎先生とか恥ずかしいから、諄って呼んで」 僕は思わず声を出して笑ってしまった。 「先生なのに、恥ずかしいの?」 「恥ずかしいよ。....それに君と、ユウと仲良くなりたいから。名前の方が、友達っぽいでしょ?」 ツラいだけの病院の中で、僕は初めて楽しいって思える出来事が起こった。 「点滴、もうちょっとだから。もう少し、我慢できる?」 僕は頷く。 「先....諄。忙しくなかったら、お願いがあるんだけど」 「何?」 「もうちょっと、手を握っててもらってて....いい?」 「いいよ」 「....諄の手、あったかくて気持ちいい....」 僕は、もう一度目を閉じた。 何故だろう。 目を閉じると感じていたさっきみたいな恐怖は、不思議と感じなかった。 諄のあたたかい手は、僕を優しく包んでくれているみたいだった。 ✴︎ 薬剤投与が終わったユウは、数日後、副作用で発熱した。 ついこの間まで楽しそうにおしゃべりして、ニコニコしていたユウだったのに、今じゃ目を開けるのもままならないくらい苦しそうで、荒い息をしている。 いつも冷たいユウの手が、ありえないくらい熱い。 「....ユウ、大丈夫?」 俺が話しかけると、ユウはうっすら瞳をあけて、にっこり笑う。 「うん。平気....」 そう言うと、すぐまた目を閉じた。 全然平気じゃないのに、なんで我慢するの? ....かわれるものなら、かわってやりたい。 願いがあるなら、叶えてやりたい。 ユウの笑顔が見たい。 いつしか俺の心の中は、ユウでいっぱいになっていた。 こんなに愛おしいのに、こんなに何もできないなんて....。 寝ているユウに、思わずキスをしてしまった。 唇が熱い。 血小板減少による出血のせいで、ユウの口は血の味がした。 毎朝、目覚める度にこんな感じなのかな....。 ニコニコした笑顔の裏で、こんなにツラい思いを隠して我慢しているなんて想像もしていなかったから、思わず、涙が出てきた。 ユウの熱い手を握って泣いていると、俺の頭を柔らかく撫でる感触がした。 目をあげると、ユウが優しい瞳をして、俺の頭を撫でていた。 「....なんで泣いてるの?....先生なのに、へんなの....」 そういうと、ユウは笑った。 ユウの方がツラいはずなのに....俺は、情けなくなった。 だから、精一杯笑った。 「ユウ、熱が下がったら、何かしたいことある?」 「....うーん、何かしたいことかぁ....いっぱいありすぎて....決めらんない....」 「アハハ。ユウらしいね」 ふと、ユウが遠くを見て言った。 「....海に行きたい....」 「海?」 「........間違っちゃった....忘れて....」 「ユウ....」 「....アイスが、食べたい....」 ユウは、にっこり笑って言った。 また、本当の気持ちを押し殺して....我慢してる。 「好中球が減ってる?!」 俺は検査結果を見て、愕然とした。 熱も下がって、だんだん元気になって、笑顔も増えたユウの検査結果が芳しくない。 造血因子も投与したのに....。 好中球は白血球の一種で、治療をしてもこれが減る、或いは増えないと、感染症に対するリスクが高まって、すぐ重症化してしまう。 事実、ユウは、以前と比べると体力がガタッと落ちた。 細い体が、より一層細くなっている。 俺はどうにかして、ユウの願いを叶えてあげたくなった。 「今の体力じゃ、外出は無理だよ」 高田は困った顔をして言った。 「....やっぱ、そうだよね」 俺は下唇を噛んだ。 高田はそんな俺の胸中を察したのか、俺の頭に軽く手をのせる。 「気持ちはわかるけど、あんまり強く思い入れると、自分がもたないよ」 分かってる。 分かってるよ、そんなこと。 分かってるけど、自分が無力すぎて情けないんだよ。 ✴︎ 僕が熱でぼんやりしていると、諄がキスしてきた。 柔らかくて優しいキス。 なんか嬉しくなって。 ずっとそのままでいてほしくて。 僕は寝たふりをした。 諄が楽しくおしゃべりをしてくれたり、僕の手を優しく握ってくれたりするから。 僕は、いつの間にか、諄が大好きになっていた。 諄と一緒にいたい。 話がしたい。 ずっと、諄の体温を感じていたい。 でも、僕のせいで泣くんだよ....。 僕は、諄の明るい笑顔が見たいのに。 諄が「熱が下がったら、何かしたいことある?」って聞いてきた。 したいことは、山ほどある。 思わず、1番したいことを口に出してしまった。 「....海に行きたい....」 今の僕じゃ、絶対無理な願望。 ....なんで口に出しちゃったんだろう。 諄は、絶対覚えてる....。 諄のことだから、叶えようと頑張っちゃうはずだ。 諄が僕のことで悩んだり泣いたりするのが、耐えられない....。 熱が下がると、だんだん調子も良くなってきた。 けど前からすると、体力がない。 だから、桜の木に登れなかった。 ....できないことが、増えていく。 僕は空を近くで見たくて、屋上に行った。 屋上まで階段を使ったら、息が切れる。 屋上のフェンスを掴む手にも力が入らないし、手首も細くなっている....。 空はキレイで風も気持ちいいのに。 僕自身が、不安で不安で、しかたがなかった。 ....僕はこわくなって、思わずフェンスを握りしめる。 「ユウ!」 僕を呼ぶ声でハッとした。 諄が下から僕を見つけて、手を振っている。 諄の元気な笑顔に、僕もついつられて笑顔になってしまった。 「あんまり長居するなよ!」 「はーい!分かってるよ!」 諄が僕から背を向けた瞬間、僕は思わず泣いてしまった。 立っていられなくなって、そのまま座り込んで、声をあげて泣いた。 心の中に押し込んでいた色んなものが、一気に溢れてきたみたいで、すごく、苦しい。 痛いことやツラいこと。 将来が見えない僕のこと。 もっと、違ったカタチで諄と出会いたかったこと。 「ユウ!」 その声とともに、僕は後ろから諄に抱きしめられていた。 ....あたたかい....でも.... これ以上、優しくしないでほしい....。 僕は、どんどん、諄に不安な気持ちを隠せなくなってしまう。 「....諄、もう、僕に優しくしないでよ!....このままだと、ツラくて、不安で....僕、諄に八つ当たりしそうだ!....」 自分でもびっくりするくらい大きな声で言ってしまった。 「諄に....嫌われたくないんだよ....」 僕は、諄に背を向けて泣いた。 それでも、諄は僕を抱きしめて離さなかった。 諄は、細くなった僕の体をいたわるように、ゆっくり僕を向き直させる。 そして、僕の肩を掴んできた。 その手は、痛いくらい力が入ってて....諄は、泣いていた。 「嫌いになんてなるわけない!....ツラかったら、俺に言ってよ!不安なら、俺にぶつけてよ!全部俺が....俺が、受け止めるから!」 ....びっくりした....。 いつも優しくて。 明るい諄の感情が爆発したのを初めてみた。 思わず、目を見開いて諄を見てしまう。 「ユウは、我慢しすぎなんだよ....ツラいって言っていいんだよ....痛いって、言っていいんだよ。俺を、もっと頼ってよ....」 そう言うと、諄はまた僕を抱きしめた。 「ユウのことは、俺が守るから。大丈夫だから。だって、俺は....ユウが大好きだから....」 ....その一言が、僕の胸に突き刺さって、僕はまた泣いてしまった。 〝人を好きになる〟って、こんなにも苦しくて、切なくて....あったかいことだったんだ....。 諄に出会えて、よかった....。 諄は、僕の頰に手を添えて....僕にキスをした。 優しいキスが激しくなる。 僕の口の中は、常に血の味がするのに、諄はおかまいなしに、舌を絡めてきた。 「....ん....!」 思わず、声が出てしまう。 僕たち以外の時間が、止まってしまえばいいのに....。 諄は、そっと唇を離す。 僕は、息があがっていて....でも、すごく幸せだった。 諄は僕のおでこにキスをした。 「....ユウ、大丈夫?」 「....大丈夫....」 「そろそろ、部屋に戻ろうか。風邪引いたら大変だ」 諄は、僕をいたわって、優しく笑った。 「諄、一つお願いしていい?」 「何?」 「もう一度、抱きしめて。僕の不安を消すくらい、強く」 諄は、ぎゅっと抱きしめてくれた。 僕に諄の体温が伝わって、あたたかかった。 僕の中の不安が、溶けていくみたいで....僕は、ずっとこのままでいたかった....。 ✴︎ 病院の桜の花が咲く季節になると、俺は心がざわざわする。 桜の木を見ると、胸がしめつけられるように苦しくなった。 桜の木に登って空を見上げるユウ。 その表情は穏やかで、やっぱりキレイで。 俺に気付いてにっこり笑うと、ユウの姿はスッと空の色と同化して消えていった。 桜の花びらだけが、ふわふわ残る。 ....ユウは、しばらくして俺の前から消えてしまった。 免疫力がなくなって、抵抗力もなくなって。 楽しそうに歩き回ることもできなくなって。 そのまま、静かに、息をひきとった。 でも、最後まで俺を気遣って、にっこり笑ってた。 動かなくなったユウの顔は思った以上に小さくて、黒くてはっきりした瞳は、2度と俺を見ることはなくて。 でも、その赤い唇が今にも「諄」って、話しかけてきそうな感じがした。 心の中にポッカリ穴が開いて、しばらく何もやる気がしないくらい落ち込んでしまった。 そんな俺に高田は気を使って、やたら明るく振る舞ってくれていた。 俺は、なんとか生きているって、感じだった。 ユウがいなくなって2カ月たったころ、ユウのお母さんが、俺を訪ねてきて。 そして....ユウからの手紙を渡された。 お母さんが俺の手を握って言った。 「私が面会に行くと、いつもあなたの話を嬉しそうに、楽しそうにしてました。 なんでも我慢する子だったから、心配かけないように病院での事は、全く言わない子だったので....ユウは、あなたがいてくれて、本当に救われたんだと思います。....本当にありがとう」 その言葉に今にも泣いてしまいそうだったけど、お母さんの前で泣くわけにもいかなくて、ひたすらお母さんの手を握っていた。 スカイブルーの封筒には、〝僕がいなくなったら、諄に渡して〟と書いてあった。 便箋を開くと、懐かしいユウの文字が並んでいて、それだけで、胸がいっぱいになる。 〝諄へ なんか、恥ずかしいけど。 僕の気持ちをちゃん書こうと思って。 諄がこの手紙を読んでいるときは、多分、というか、絶対、僕は諄の前からいなくなってると思う。 諄にちゃんと「ありがとう」を言えたか分からないから、あらためて「ありがとう」って伝えたかったんだ。 僕は諄に会えて、本当に幸せでした。 ツラかった病院での生活を楽しく変えてくれて、とても嬉しかったし、毎日、諄の笑顔を見るのが楽しみで、朝起きるのが待ち遠しいくらいだったんだ。 本当は、もっとずっと、諄と一緒にいて、色んなことをしたかったな。 ねぇ、輪廻って知ってる? 人って何度も生まれて、死んでを繰り返すんでしょ? 僕もそうなりたいなぁって思ったんだ。 僕が死んで、またどこかで生まれるでしょ? 僕、諄のこと覚えてる自信があるから、諄に絶対会いに行くよ。 だから、僕が生まれ変わって会いにいくまで、待っててくれる? でもさ、世界は多分、思っている以上に広いから、時間がかかっちゃうと思うんだ。 それで、最後のお願いなんだけど。 僕が見つけやすいように、いつも笑っててくれる? 知ってる? 僕は、諄の笑顔を見つけるの得意なんだよ? 僕の最後のお願いだから、ちゃんと守ってね。 ....さよなら、諄。 ありがとう。 ずっと大好きだよ。 ユウより〟 俺は、口に手を当てて、声を押し殺して泣いた。 なんで、俺に〝笑って〟って、言うの? 俺の記憶に残るユウの笑顔や仕草が、目にちらついてどうしようもなかった。 手紙の所々にユウが落とした涙が滲んで、あとになってて....ユウが生きているうちに残した痕跡が、愛おしくて。 でも、余計に悲しみがこみ上げて、いたたまれなくなった。 手紙を抱きしめて、俺は、だだ、ずっと泣いていた....。 最後のお願いは....必ず守るよ、ユウ。 俺の方こそ、ありがとう...,。 俺は、ユウが消えた桜と空の間を見つめて笑う。 ユウ、今どのへん? 俺はここにいるよ。

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