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第3話 おねがいききます券 3
気のせいかな、さっきよりも
「なか、少し柔らかくなったみたい」
「ぅ・・・ん」
僕の腕に両手でしがみついて、蓮くんは荒い呼吸を繰り返す。
体に力が入りすぎているのかそれとも力が入らないのか分からないけど、だんだんと体勢が斜めに崩れる彼の頭が僕の腕にもたれかかる。頭頂部しか見えていなかったのに、見下ろせば今視界に入るのは蓮くんの綺麗で可愛い顔だ。
しかも薄ら汗ばんで紅潮していて、顰めた眉間に閉じた瞼と震える睫毛、下唇を噛み締める表情が凄くえっち・・・
ムクリと下半身が反応してしまう。
体を弄られている蓮くんのアソコは無反応なのに、弄ってる僕の方が勃ってどうするんだ!
相手が女の子ならまだしも、自分と同じモノが付いた男なのに!
同じ男・・・なのか?
尻の穴と同様に薄いピンク色でつるんとした陰茎と陰嚢。陰毛も手入れしてるのかな、短くてサラサラで少しふわふわして手触りがいい。『好きな人』のために脱毛したというすべすべの肌は僕の体とは全くの別物。
これ、見れば見るほど猥褻物でしかないよ、蓮くん!
これ以上見続ければフルに勃起するのは免れない。僕は蓮くんから目を逸らし、指を動かし続ける。
「やっ、待て、奏っ。痛 ぃ」
「ごめんっ、つい・・・」
興奮を抑えきれずに挿抜のスピードを上げてしまい、蓮くんに痛みを与えてしまった。
「ん・・・ん、俺こそ、ごめんな。どう見たってお前、童貞なのに。こんなことさせて」
「今更でしょ。それにその券あげたの僕だし」
「は・・・、お前めっちゃ良い奴じゃん。そんなんじゃこの先悪い女に騙されんじゃね?」
苦しそうだった蓮くんの顔が緩む。
ああ、やっぱりこの人は笑った方が綺麗だ。
僕が童貞だから、他人の体の内側を触る事が初めてだから、男の蓮くんにも興奮してしまうのかな。
蓮くんのイヤラシイ姿に魅入られてしまった僕は、吸い寄せられるように彼に顔を寄せる。
「奏汰?」
不思議そうに僕を見上げる蓮くんと目が合って、もっと近付くとその目は驚きで見開かれる。
「む・・・ぅ!?」
腕の中で暴れ出し急に抵抗する蓮くん。
窄まりに差し込んだままの指は更に締め付けられて、まるで僕を離さないと言っているよう。
それとは逆に顔を思いっきり押し返されて
「ぷはぁっ、てめぇ、何すんだ!」
と、怒鳴られてしまう。
「何ってキス・・・」
ハッ!僕は今、蓮くんにキスしたのか!?
完全に無意識だった。ただものすごく蓮くんが可愛く見えて、それで・・・
「ふざけんなよ!男とは初めてなんだぞ!? それが・・・相手がお前みてぇなモッサイ奴とか笑えねーだろ!」
イヤイヤ、僕だって男とは初めてだよ。てか僕におケツ開発依頼してる時点で笑えないだろ。
「いいじゃん。減るもんじゃないんだし」
「減る!俺のメンタルが削られる!」
なんだよそれ。
「メンタルねぇ・・・。ってか男にこんなことされてんのに、キスひとつでギャーギャー言うなんて、処女丸出しだね」
「・・・は?」
「蓮くんの好きな先輩は、処女は嫌いなんでしょ?」
尻を開発しろとまで言われたのにキス程度を拒まれて、無性に苛立つ俺は彼に意地悪のひとつもしてみたくなる。
「ひあぁっ、あ゙・・・っ」
中指を引き抜いた蓮くんの小さな穴の中に無理矢理に指を二本埋め込むと、おそらく痛みからなのだろう、蓮くんの体はカタカタと震え 肌はじっとりと汗ばむ。
「お尻開発してどうするつもりなの。先輩の、ここに挿れてもらうつもりなんでしょ?」
「ぃ・・・っ、ぅ・・・」
「指二本挿れられただけで泣いちゃうなんて。先輩のアソコが大きかったらどうするの?こんなに締め付けて、挿れた方が痛くてびっくりしちゃうんじゃない?」
嘘は言ってない。蓮くんの中はぎゅうぎゅうに狭くてキツくて、挿入した二本の指は微動だにできなくて、こんなにも窮屈な所じゃ挿れた方が痛みに悶え苦しむに違いない。
「う、やだぁ・・・。きもち、よくなって、ほしー・・・」
「先輩は男が好きなの?」
「っ、なわけ、ねぇ」
「だったら誘い方も身につけなきゃだよね。ほら、脚開いて穴緩めて『ください』っておねだりしないと。女の子みたいにさ」
いやいや、実際そんなおねだりされた経験なんて皆無だけど。AVとかで観たことあるなんだけど。
「う・・・ぅ、痛ぁ・・・ く、だ・・・」
ぎゅっと閉じた蓮くんの目から押し出された涙。
どうしよう・・・すごく興奮する。
あの蓮くんが、僕に泣かされてる。アンドロイドみたいに端正な顔が歪んでる。
ただ姉ちゃんの幼なじみってだけで僕なんかこの人の眼中に無いと思ってたのに。
あまりに想像もしてなかった状況に僕の脳がバグを起こしているんだ。男のえっちな姿に興奮するなんて。
「早く言いなよ。ここに挿れて、って」
隙間無く圧迫してくる内壁を押すように指を曲げると、蓮くんの腰がびくんと跳ねる。
「ふあっ、あ・・・っ」
明らかに痛がる声じゃない。指の先が当たる場所、ここが気持ちいいのかもしれない。
そう思ってぐっぐっと何度か押してみる。
「んっ、んぅ・・・」
表情は辛そう。でも僅かに高くなる声と中を押す度に締め付けを強くする内壁、下腹部が上下する動き。
「挿れて、先輩の亀頭でここ押してくださいって、言ってみてよ」
「・・・っ」
ぼっと火がつくみたいに蓮くんの顔が真っ赤に染まる。
「ベっ、ベラベラうっせぇんだよこの陰キャクソ童貞が!聞いててこっちが恥ずかしいわ!!」
「ぐふ・・・ッ」
蓮くんが怒鳴ったと同時に締め付けが緩み、鳩尾に彼の肘鉄を食らった僕は思わず指を窄まりから抜いてしまう。
その隙に腕の中から蓮くんに脱出されてしまい、ベッドから降りた彼はローションを素早く拭き取りそそくさと下着とボトムスを履く。
「出掛けるぞ」
「ええっ!?」
急!!
「あの、でももうすぐ18時だし今から出かけるなんて・・・」
「おめーは小学生か。おばちゃんには俺が言っとくから、さっさと手洗って来い!」
「は、はい」
スマホを操作した後、プリンターから出てきた紙を持って蓮くんは僕を部屋に置いて階段を降りて行ってしまう。
も~、何なんだよ。尻弄れって言ったり急に出掛けるって言ったり・・・
でも何故か逆らえない。歳上だってこともあるけど、あの綺麗な顔で言われると どうしても従わざるを得なくて。蓮くんはまるで女王サマみたいだ。あっ、男だから王様か。
なんて考えながらトイレに入って、不覚にも反応してしまった自分のムスコをなんとか鎮め手を洗って玄関の外で待つ蓮くんの元へ。
「どこ行くの?」
「あー、髪切りに。あと眼科」
「そんなの一人で行けばいいじゃん」
「はあ? 俺じゃねーよ。お前だっつーの。今おばちゃんにサイン貰ってきたし」
目の前に差し出されたのは何かの同意書と僕の保険証。
「なに、これ」
「お前はまず童貞を卒業して来い。そのためにそのもっさい見た目を変えてやる。彼女作ってセックスのやり方を身につけて、その上で俺のケツを開発しろ。お前、素材は悪くねぇのに勿体ないんだよ。見た目もっさいし下手クソ過ぎて哀れだし、なんか、見てらんねぇ」
「えっ、えっ?」
早口過ぎて言ってる意味がよくわかんないけど、とりあえず僕が『もっさい』って事だけはわかる。
「いいからついてこい!」
大股で歩き出す蓮くんに、僕は慌ててついて行く。
「ちょちょっ、待ってよ~」
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