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第7話 開発日誌:前立腺について 4
下着の裾から指を滑り込ませると、すべすべの肌が指先に気持ちいい。
ああ~、これでもっと肉付きが良かったらきっと最高の触り心地なんだろうな。
尻の穴だけじゃなくて、蓮くんの身体丸ごと僕が管理してあげたい。
おばさんが家に帰って来ないからきっと食生活が満たされてないんだ。
「蓮くん、ウチにご飯食べに来なよ。姉ちゃんが一人暮らししてからも、いつも母さんが作り過ぎて余っちゃうんだ。蓮くんが食べに来てくれたらきっと母さんも喜ぶよ」
「んっ、・・・でも、っ悪いし・・・」
尾骶骨を撫でると、ピクンと僅かに跳ねる細い腰。
「そんなことないよ。僕から母さんに言っておくから、バイト無い時だけでもいいから来てよ。こんなに痩せてて心配になる。・・・きっと『先輩』も抱き心地がいい方が気に入ると思う」
なーんて知らないけどね。
完っ全に僕好みの体にしたいだけ。
「わかった」
好きな人の為ならあっさりと受け入れちゃうんだ。
・・・ふーん。
「ねえ ここ、少しは自分で触ったりした?」
窄まりを爪先で緩く引っ掻くようにすると、ひくっひくっ と更に窄めて短い呼吸をする蓮くん。
「触っ・・・ろーと、思った・・・けど」
「触れなかったんだ。どうして?」
「恥ずかしい、し、汚ねえ・・・から」
「ふーん。でも蓮くん、恥ずかしくて汚いとこを僕に触れって言ってるんだよ? 酷くない?」
「それはっ ・・・ごめん」
素直に謝る蓮くんに、僕は胸の真ん中に鳥肌が立ったようにゾワッっとした感覚が走る。
別に謝罪して欲しい気持ちなんか無かったのにどうしてだろう、いつも偉そうにしているこの人が不意に見せる素直さや弱さに、僕は堪らなく興奮してしまうらしい。
「ここから出るモノ、出してきたの?」
「ぅ・・・ん」
下世話な僕の質問に、蓮くんの白い背中がピンク色に染まる。
「出してスッキリして、中も洗って来たんだよね。シャワーかな?それとも浣腸液?」
アナルセックスについては予習済みだ。直腸の中を空にしておかないと不衛生だし、きっと蓮くんは僕に不快な思いをさせないように準備をしてきたはず。
「しゃ、わー・・・」
「へ、へぇ~」
想像してしまう。自分の尻の穴に指を突っ込めないこの人が、ホースの先をあてて ここからお湯を飲み込み吐き出すところを。
その時の蓮くんがどんな顔をしてたのか気になる僕は、世にいうセクハラおやじの気持ちが今、分かりすぎるほどにわかってしまう。
ボクサーパンツの左右の裾を両手で捲し上げ ぎゅっと真ん中の割れ目に寄せると、股間の膨らみが布の中で凝縮されて淫靡過ぎる。
「人のケツで遊んでんじゃねぇぞてめー。早く脱がせろよ!」
「はいはい。もー、好きにしていいって言ったのに」
「あ!?」
「なんでもない」
蓮くんの機嫌を損ねて「もうお前には頼まない」なんて言い出されたら困る。だって、僕以外の誰かがこの姿を見るのは、なんか嫌だ。うん、すごく嫌だ。
「脱がせるね」
そう言うと蓮くんは こくん と頷く。
あれ、おかしいな・・・。手が・・・
自分の手がじっとり汗ばんで震えている。
何しろ他人のパンツを脱がせるのが初めてなんだ。緊張して当然。
ユカちゃんのパンツってどんなんだっけ?まじまじと見た記憶が無い。彼女は部屋に二人きりになった途端に跨ってくる超肉食系女子。下着姿の彼女を堪能する時間すら与えてくれなくて、セックス=挿入だと考えてる。悪く言ってしまえば情緒もくそもない女の子だ。
せっかくあんなに可愛い彼女がいるのに、こんなふうに下着脱がせるという男のロマンを まさか同じ男の蓮くんで叶えようとは・・・。
精神を落ち着かせボクサーパンツを蓮くんの脚から引き抜くと、当たり前だけど穴は一個しかなくて、毎日見ていたビラビラした縦割れが無くて、つるんとした会陰の下には少し赤みがかった嚢胞が控えめに垂れ下がっている。
当然の如く自発的には潤わない窄まりに潤滑ジェルを丁寧に塗って、僕は蓮くんが封を切って取り出したコンドームを中指に被せて慎重に挿入する。
相変わらず狭くてキツい。蓮くんが上手く力を抜いてくれたらいいんだけど。
何とか指を進めていき、恥骨の裏辺りの内壁を指先で軽く押してみる。
「んぅ・・・、う・・・ んんっ」
ビクンと彼の尻が上がる。
ここだ、きっとここが前立腺なんだ。
指先に当たるコリッとした感触。
トントンと指の腹で小刻みに叩いてみる。
「ん、んぅ、んんっ」
「気持ちいの?」
「わ・・・かんね、変なっ感じ」
「これ好き?嫌い?」
「っ・・・・・・・・・すき」
思わずドキッとしてしまう。
そうか、蓮くんは男の先輩が好きで、前立腺を弄られるのも好き・・・、だと。好き・・・覚えておこう。
コリコリした内壁を擦るように、今度はゆっくりと指を前後にスライドさせてみる。
「はぅっ、・・・あ、あっ」
明らかな喘ぎに変わる蓮くんの声。
「これ? これがいいの?」
「わか、んっ」
「わかんないじゃなく、ちゃんと言って。気持ちいいんでしょ?」
「ふぁ・・・っ、あ、・・・・・・いっ」
擦る回数を増す毎に蓮くんの腰が高く上がってくる。時々プルプルと震え、小さくくねらせ、
「女の子みたい」
男がこんな風になるなんて誰が想像できただろう。
そしてこんな風になっている男を見てフルに勃起してしまう僕も。
「かなたっ、もぉやめ・・・も、おわりっ」
「ダメだよ。まだエネマグラ入れてないでしょ」
「ぁう・・・、やあ・・・っ」
蓮くんは四つん這いの格好からゴロンと体を転がし、横向きになって抵抗しようとする。
うつ伏せになっていた彼の顔がようやく見えて、眉尻を下げて涙ぐんでいる表情に僕は釘付けになる。
「かわいい、蓮くん。ねえ、すっごくかわいいよ」
「ば・・・っ、てめぇ!・・・んんっ」
口汚く恨みごとを言ってても、態度は怯えた仔猫ちゃんだ。
ああどうしよう、勃起したアソコが痛い。僕の指一本でグズグズになっている蓮くんが堪らなく愛しい。
こんなのおかしい。ユカちゃんにすらここまで興奮したことは無い。
指の速度を上げると、それに合わせて蓮くんの喘ぎも短く速くなる。
「や、あ、あっ、やめ・・・」
「ああもう、蓮くんどうしてこんなに可愛いの。止めれるわけないじゃん」
「奏汰! も、だめっ、やだ! やだぁっ」
挿入していた中指が ぎゅうっ と締め付けられて動かせなくなる。
一瞬緩んだかと思うとまた締め付けられて、何度かそれを繰り返し、蓮くんは「はあ、はあ」と大きく呼吸をする。
「だ、大丈夫・・・? 蓮く・・・」
窄まりから指を抜き、彼の顔を覗き込もうとして僕は気付く。
ベッドの上に広げたバスタオルに染み込んでゆく白濁した液体。半勃ちの彼の陰茎。
もしかして、
「イッたんだ・・・?」
「・・・だからやめろって、言ったのに。ごめん、気持ち悪いもん見せて」
「どうして? 嬉しいよ! お尻弄って蓮くんがイッてくれるなんて、嬉しいに決まってんじゃん!」
「はっ、お前ホモなの? 彼女いるからバイか。 それともただの変態?」
「・・・」
蓮くんに聞かれて即答できない。僕はユカちゃんが好きだ、たぶん。でも蓮くんの方がかわいい。それはゲイだとかバイだとかで説明がつく事なんだろうか。それともただ変態、という括りに入っているんだろうか。
わからない。でも今はただ、もっともっと蓮くんを気持ち良くさせてあげたい、それしか考えられない。
「・・・蓮くん、開発しよう。前立腺」
「は!? 質問の答えになってねぇ!」
「じゃあ変態でいいよ。そんなことよりこっち」
僕は、ぐったりした彼の無防備な尻の穴にジェルを塗り足しもう一度指を挿入する。
「あうっ、や・・・今日は、もういい・・・」
「よくない。蓮くんの開発係として中途半端なことはできないんだ!」
「ちょ、あ、あ・・・っ。ああ──・・・」
よく分からない使命感に託けて、僕は蓮くんの体に触りたいだけだ。
そう気付いたのは、家に帰ってから書き足した『開発日誌』を閉じた後だった。
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