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第9話 ストーカーは突然に 2

でも奏汰とこんな事をするのはもうやめなければ。 机の引き出しに入ってた『おねがいききます券』を見つけて、切羽詰まってつい勢いで「尻を開発しろ」なんて頼んでしまったけど、こいつには彼女もいてノーマルで・・・明らかに俺が利用してるのも気付かないし。 「奏汰、マジでもうやめよ。お前に頼んだの間違いだったわ。他にもアテあるし、もう俺のことは気にすんな」 他にアテなんて無い。ある訳ない。自分が男を好きだって誰にも言えるはずが無い。 本当は結城さんを誘えるなんて思ってもない。抱かれたいって願望だけで、俺がどれだけケツを開発しようが万が一にも男を誘惑できる魅力を身につけようが、そんなの叶わない事だってわかってるから。 一生このままでも仕方ないって思ってる。 「・・・アテ、ってどういう意味? 僕以外にも、蓮くんは男が好きでお尻を開発したいって思ってるの、知ってる人がいるってこと?」 低く重い奏汰の声。 『他にもそういう奴がいんのに僕に頼むことないじゃん、気持ち悪い』 そう思ってんだろうな。 「まあ、そんな感じ。ごめんな」 幼なじみの弟に不快な思いさせて。 朝勃ちの股間に触れる手から逃れるように、布団の中で体を転がし奏汰に背を向ける。 「ダメだよ今更。蓮くんの開発係は僕なんだから」 「は? お前何言ってんの、せっかく解放してやろーと思ってんのに。・・・てか何してんだよ」 布団へ入って来た奏汰が背中にくっつき抱きついてくる。 自分より大きくて逞しい体に包まれたのが初めてで、こんな風に抱きしめられたかったんだ、とマイノリティに従順な本能が喜びを覚える。 心臓がドクドクと脈打ち体が熱くなって、不可抗力だとわかっていても、恋だと勘違いしてしまいそうなくらいドキドキしてしまう。 「彼女以外をだっ、だきしめたりすんのは、立派な浮気、だとおもっ、思う!」 何を言ってんだ俺は。 奏汰にとって男を抱きしめるのは浮気でも何でもないだろ。 「僕がユカちゃんと別れたら、蓮くんのお尻、他の人に頼んだりしない?」 「は・・・? な、に言ってんのお前。彼女と俺のケツなんて天秤にかけるまでもないだろーが。だいたい、そういう問題じゃない」 「・・・」 無言になる奏汰の腕を解こうとしたけど、脚で下半身までガッチリとホールドされて、逆に身動き出来なくなってしまう俺。 クソ。絶対俺の方が普段から体動かしてるはずなのに、元根暗メガネの方がガタイが良くて力があるなんて世の中は不公平だ。 「僕ね、エッチが好きな彼女を満足させれないんだ。始めのうちは頑張ったんだよ。でも求められ過ぎるのがしんどくて・・・。金曜日に初めてデートを断ったら、そっこーで浮気されちゃって」 奏汰は「ふふっ」と力無く笑う。 「彼女に振られて寂しいのか?」 「ううん。見た目が良いから彼氏としては置いといといてくれるみたい。学校では陰キャだったけどそれなりに優等生だったし、これでも僕、今はカースト上位にいるんだよ? 髪切ってコンタクトにしてたった二週間なのに、もう何人の告白を断ったか・・・」 「そんなにモテてんなら、浮気女なんかと別れて他いけよ。情けねぇな」 「だよね。勇気が無くて、自分から彼女に別れるって言えなかったんだ」 俺に巻き付く奏汰の手足に力が入る。 「でもね、もういいや。彼女がいるから蓮くんに触れないなんて嫌だ。だから別れる。新しい彼女も要らない」 「ちょっと待て。俺のせいでお前が女と付き合わないとかありえねぇから!」 何言い出すんだこのアホは。別にホモでもなんでもない奏汰がそこまでする必要なんかないし、俺はそんなの望んでない。 「蓮くんを開発したい。男なのにすごくエッチで、もっともっとエッチになる蓮くんが見たいんだ」 「は・・・」 え、ええええっち!? 男の俺が!? ノンケの高校生にそう見えてんの? ヤバイぞこれは。お世辞(?)だとしても嬉しい。もし奏汰の言ってることが嘘じゃないなら、結城さんにもそう思ってもらえる可能性も無くはない・・・? 嬉しさは期待へと変わる。 一生クローゼットゲイの覚悟もしてたのに、普通に男と恋愛をしてる自分までもを想像してしまう。 「ま、じで? 俺、男から見ても、そういう対象に見える?」 なーんつって調子に乗った疑問をぶつけてしまうくらい舞い上がってる。 「見える。こうやって触れば、もっとそう見えるよ」 骨盤をなぞった奏汰の手が、服の上から尾骶骨を擽ってくる。 ビリビリと背中に電気が流れるような感覚で自然と体が小刻みに反応してしまう。 「かな、た。くすぐったい」 「擽ったい所は全部性感帯にできるんだって。僕が蓮くんのここ、性感帯にしてあげる」 「えっ、ちょ・・・っ」 布団の中で無理矢理 奏汰の方を向かされ、上になった方の俺の片脚は奏汰の両脚に拘束される。 片手で強く肩を抱かれ、密着した男の胸の硬さに目眩がしそうだ。 「ん・・・っ」 空いたもう片方の奏汰の手が背中に触れて、腰まで滑る感触に思わず声が漏れる。 意識したくないのに、歳下のくせにしっかりした体つきや高めの体温や大きな手のひらに奏汰を『男』だと感じて、どうしようもなく気持ちが昂ってしまう。 「蓮くんは背中も気持ちいいんだね」 「く、擽ったくてっ」 ってとこは性感帯に、だっけ? これじゃ気持ちイイって自白してんのと一緒じゃん! 「だったら笑いなよ」 冷静な奏汰の声。 そりゃそうだ。擽ったいだけなら笑えばいい。俺は口元を緩ませる。 「はは・・・、は ぁ・・・あッ、んんっ」 無理っ!! こんな絶妙なタッチのサワッサワ感、感じるなって方が無理!! 背中から腰の辺りを何度も上下に行き来する奏汰の指先が気持ち良すぎて、なのにもどかしくて。 『突き放さねぇと』って思ってるのに、震える腕が奏汰の背中に回ってしがみついて、磁石になったみたいに離れることが出来ない。 だめ、このままサワサワされ続けたらヘンになりそう。 「もぉ、触んな・・・ぁ」 どう抵抗していいのかもわからず、更に奏汰にしがみつく。 「怖がらないで蓮くん。大丈夫だから」 「そう、・・・じゃね、あ、んっ」 怖がってねえ! そんで何が大丈夫なんだよ!? トップスの裾から入って来た奏汰の手が直接肌に触れる。 「ひッ、・・・ぁう、う」 奏汰の手は動いてないのに背中に触れられているだけで、腰を内側から何かに掴まれて筋肉を動かされているように 臀部が引き上がる。 「どうしてそんなやらしい反応すんの? こんなの見せられたら、たいていの男は興奮しちゃうよ」 「す、するかバカ!」 そうだ。普通の男はきっと、同性が感じてる姿を見て興奮なんてしない。むしろ気持ち悪いって思うんじゃないだろうか。 バカは俺じゃん。まんまと奏汰にのせられて、情けねぇ声出して腰をヒクつかせてる。男のくせに気持ち悪い。 なのにやっぱり俺よりバカなのか、こいつの手は再び俺の『性感帯』とやらを探り動き出す。 「蓮くんは自分で見えない部分が感じるんだよ。こことか・・・」 奏汰は 俺のボトムスと下着の間に手を差し込んで、指の先で尾骶骨を掻くように小刻みに動かす。 「ふぁっ、あ、あぁ───」 弱く引っ掻かれる度に条件反射でビクビクと動く下半身。気色の悪い声を我慢すらできなくて、腰周りは溶けそうに熱くなる。 朝勃ちに輪をかけてガチガチになった自分の股間が奏汰の太腿に当たってる。 恥ずかしくて、でも気持ち良くて。 いっそこのまま犯してくれたら・・・血迷った思考が脳を侵して快楽を求めたくなる。

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