13 / 55

第13話 蓮くんは僕が護る 3

そして待ちに待った日曜の朝 塩田家に連泊している僕は蓮くんの隣で目覚める。 相変わらず向けられた背中は無防備で、気を許してくれてるんだと嬉しくなる反面、男として警戒心すら持たれていないんだろうな、と少し残念にもなる。 「朝だよ蓮くん、起きて。ずっと我慢させられてて、もうかなり限界なんだから」 「きも・・・。そういうのは恋人とかに言うセリフだろ、ふつー」 その恋人になってほしいって言っても絶対頷かないくせに。 「起きてたんだ」 「べ、別に今日が日曜だから早起きしてたとかじゃねぇからな! GW明けまで社員の出勤優先でバイト削られてっから、体あんま動かしてねーし、だから・・・」 「どゆこと?」 「掘り下げんな! 俺だってたまには早く目が覚めることもあるってだけ!」 朝から機嫌悪いな~。そんなに僕に開発されるのが嫌になったのかな。だからといってやめてあげるつもりは無いけど。 「今日さ、お尻の中、触っていい?」 先週は背中しかできなかったし、今日は蓮くんのお尻の開発を重点的にしたい所存です、僕は。 「・・・朝メシは?」 「蓮くんいつも食べてないんでしょ。僕もお昼と一緒でいいよ」 「・・・あそ。・・・じゃ準備してくる」 蓮くんは ムクリ と起き上がって部屋を出て行く。 機嫌が悪い割には、やけに素直だ。 彼の態度に少しの違和感を覚えつつも、僕は一旦自宅へ帰りトイレを済ませ歯を磨いて顔を洗い、再び塩田家へと戻って来る。 自宅で顔を合わせた母に『朝ごはん』と言って持たされたサンドイッチをダイニングのテーブルに置き、浴室にいる蓮くんに 「母さんがサンドイッチたくさん作ったみたいだからテーブルに置いとくね。お昼に食べよー」 と声を掛けるけど、聞こえていないのか返事は無い。 「んぅ」 なんだ、聞こえてんじゃん。だったらすぐ返事してくれても・・・ 「んあ・・・、あ、やば・・・」 苦しそうな声の後で、シャワー音とは明らかに違う液体が噴き出す音。 これって、蓮くんがお尻の中を洗ってる音? ってことは、あの余分なお肉のついていないカチカチの小さいお尻の中を綺麗にしている最中なわけで。 この前の風呂場オナニーにしてもそうだけど、ひとりでなんでもやっちゃうのはズルいと思う。 何もかもを僕に任せてくれたらいいのに。 蓮くんの当初の目的は、未開拓のお尻を開発してバックバージンの喪失だったはずで、その相手に選んでくれたのが僕だった。 1ヶ月も立たないうちに僕は彼を好きになってしまって・・・、だからこそなのか開発係は継続することになったけれど「お前とセックスはしない」と言われてしまった。 僕が蓮くんを好きになっていなかったら、彼の初めての相手になれたんだろうか。 『開発係』をいいことに好き勝手に彼の身体を触って股間を膨らませている僕を蓮くんは知っているんだろうか。 知られたくないようで、知っていて欲しい。 知られたところで挿入させてもらえないんじゃ、やっぱり知られていない方がいいのかもしれないけど。 蓮くんがお尻を綺麗にしている過程を見たかったけど、なんとなく見ちゃいけない気にもなって先に彼の部屋へ戻ることにした。 カーテンの隙間から外の様子を伺うと、連休に入った為か普段の日曜の朝より人通りがある。 この様子じゃ例の犯人も目立った行動はできないだろう。 少しだけ安心した僕は、ベッドの下に置かれたアナル開発ボックスを引っ張り出し蓋を開ける。 コンドームと潤滑ジェル、ピンクローターと蓮くんが買い足した小さなアナルプラグを取り出しベッドの上に乗せると、部屋に戻って来た蓮くんが 「準備万端かよ」 と溜息を吐く。けれど赤くなっている彼の耳の縁を見てしまった僕にはその溜息が期待を隠しているだけに思えてしょうがない。 「なんでシャツ着てるの」 「け、ケツ弄るだけなんだから、上は着てたっていいだろ! ケツだけ出てりゃいいんだから!」 そう言って蓮くんはタオルを広げたベッドに仰向けになる。 背中、もう触らせたくないのかな・・・残念。 「クッション使っていい? 腰高くしたほうがオモチャ挿れやすいし」 「あ? あー、うん。お前マジで予習してんだな。なんか・・・悪いな」 「蓮くんに気持ち良くなってほしいし、そうなってる蓮くんを見たいし!」 「奏汰って・・・・・・つくづく変なヤツ」 鼻息を荒くする僕を『変な奴』扱いだけですか? 蓮くんが好きだからそうしたいんだよ? 蓮くんが自分のことを好きな人が地雷なのはわかってる。だけど、どうしたってこの気持ちを止めることはできなくて、それじゃ振り向いてもらえないのも知ってる。 ぼくは複雑な感情になりつつ蓮くんの両脚を持ち上げる。 「ちょ、やっぱこの体勢やめる! いつものやつで!」 まだ下着を履いたままの彼が両手で股間を隠す。 「どうして? また背中触られてヘロヘロになりたいの?」 「そ・・・じゃね、けど。 ・・・このカッコ、恥ずかしい・・・」 目線を僕から逸らし横を向いた蓮くんは、耳だけじゃなくその延長線にある首筋までもを赤らめている。 胸の中心から背中へとゾクゾクと何か這ってすり抜けるような感覚で、僕の体は一瞬で熱を上げる。 「恥ずかしいとかやめるとか、最中にそんなの言っちゃったら相手はシラケちゃうんじゃない?」 「う・・・」 「先輩は僕みたいにやってくれるはずないんだから、蓮くんが誘うしかないんだよ? ほら自分で脚持ってお尻見せて?」 「うう・・・」 下唇を噛み締めて羞恥に耐えながらも、蓮くんは素直に膝の裏に腕を回し脚を抱える。 でんぐり返しの閉じた太腿の付け根の間にある下着の膨らみ。蓮くんが女の子じゃない証拠。 指先で触れるとフニフニと柔らかい。 会陰に指を滑らせると、薄い布の中で窄まりが きゅ と締まる動きをするのがわかる。 「パンツ、脱がせよっか? それとも自分でお尻出す?」 「っ・・・・・・・・・ぬ、ぬがせて・・・」 自ら下着を下げるのが恥ずかしいのか、返事を迷った末に小さく呟く。 窄まりが見える位置まで下げると 「待て! そこまででっ、全部脱ぐのは・・・むり」 と制止が入る。 「わかった」 けど蓮くん、この位置でパンツ留め置いちゃったら・・・ 丸見えの穴とチラ見えの陰嚢。全部を晒してるよりスケベな画だと思うんですけど!! ダメだこれ、早くしないと僕の理性(とチンコ)が持たない。 潤滑ジェルを絞り出し、窄まりとアナルプラグに塗ってなんとか挿入して蓮くんに下着を履かせ直す。 「え、奏汰? もう終わり? てかプラグ抜いてないけど」 「終わりじゃないよ! 今日は一日それ挿れたまま過ごしてて」 「ええっ!?」 「いいからそうしててっ!」 「えー・・・マジか・・・」 渋々承諾した蓮くんはスウェットパンツを履いて、ぎこちない動きでラグマットの上に座りローテーブルの上のタブレットPCを起動させる。 「このまま過ごすだけなら課題やるわ。お前も宿題あんだろ受験生」 「うん」 僕は蓮くんの向かいに座り、持ってきていた教科書とノートをバッグから取り出す。 「おっ、その教科書懐かしー」 「蓮くん使ってたのと一緒なの?」 「おー。一緒一緒」 なーんて平静を装った会話をしてても、僕は脳内で、いつ目の前の餌に飛びついてもおかしくない飢えた獣と戦っていた。 齧り付いてしまったら、ひと口ふた口じゃきっと満たされない。骨の髄まで残さず貪り尽くしたくなるに違いない。 その頃、美味そうな餌に見える蓮くんも尻に違和感があるのを必死に堪えながら、なんでもない振りをしていた。 『ミイラ取りがミイラになる』とはこの事か。 蓮くんを脅かす相手から護りたいと近付き過ぎて、いつの間にか蓮くんにとって一番危険な存在になってしまっていたんだ、僕はきっと。

ともだちにシェアしよう!