24 / 55

第24話 書けない開発日誌 2

隠れた蓮くんの顔が見たくて、僕は部屋の電気をつける。 「おま、なにいきなり、眩し・・・」 「いきなり何かしてるのは蓮くんじゃん。な、な、何なの!? そんなもの挿れるくらいなら僕のバナナ、いや点火済みの火縄銃を挿れてくれればいいじゃん!」 「え、バナナ・・・火縄・・・? って例えが気持ち悪ぃんだよてめぇは!」 「だって、だって・・・」 蓮くんの腕をベッドに縫い付けると、眉尻を下げて気持ちいいって書いてある顔が露わになって、僕はなんだか切ない気持ちになる。 「なんで、そんな顔してんの。プラグのほうが、僕のより気持ちいいの? だから僕とはエッチしたくないの!?」 セックスしたいって言ってくれた。なのに好きだとは言ってくれなかった。 そうだよ、単純な事じゃないか。 僕とのセックスは、期待外れだったって事だ。 なのに毎日あんなに僕からのキスを求めてたなんて・・・ 「れっ蓮くんは酷いよ・・・。小悪魔だ、魔性だインキュバスだあっ!!」 ひとりお尻で気持ち良くなって、僕の反応をからかって心の中じゃ笑ってたんだ! 僕の涙が蓮くんの頬に落ちる。 「は・・・? イヤ、なんでそこで泣くわけ? だって俺、お前の巨根がすんなり挿入るように、って」 「そんなの言い訳じゃん! 蓮くん、僕なんか好きじゃないくせに!」 ボロボロと零れる雫が彼の頬を伝って枕に染みを作る。こんなに悲しくてこんなに泣いたのは初めてだ。 「はあっ!? 何言ってんのお前。つかふっつーに好きですけど!? じゃなきゃ毎日お前みたいなのにくっついて寝れるわけねーだろ!」 「だって、好きなんて言われてないし。今初めて聞いたし!」 しかもなんだよ、貴重な『好き』をどさくさに紛れた雑な感じで言うなんてやっぱり酷いよ。 「え、俺 言ってない?」 「言ってないよ! 今言われたけどさ!」 蓮くんはいつだってそうだ。 僕が予想できないタイミングで、想像もつかない形で言葉を放つ。 それがどれだけ僕を突き落として掻き乱して、昂らせるかを、本人がまるでわかっていないのが罪深い。 「ごめん、言ってたつもりだった」 涙でくちゃくちゃになった僕の顔をティッシュで拭いて、蓮くんは鼻までかんでくれる。 子供扱い・・・でも嬉しい。 先生、僕には無理です。蓮くんの事を誰よりもわかりたいけど、この人の心が読めるようになったとしてもやっぱりこの人の口から聞きたいんです。 「蓮くん、僕のこと・・・好き?」 「う、 うん。つーか改めて言わせようとすんなよ。逆に言いづらい」 言わせたいんだ。 他の誰かじゃなく、僕にくれる蓮くんの気持ちを聞きたいんだ。 「す、き・・・?」 なんで疑問形? 「僕たち付き合ってるんだよね?」 「えっ、そうなの?」 「ええっ!? やっぱり違うの!? そうじゃないの!?」 「そ、なんだ・・・。そっか、俺、奏汰と付き合ってんのか・・・」 「いやわかんないけど、僕のほうが聞きたいんだけど」 「俺付き合うのとか初だし。なんかすっげ照れる」 へへ、とはにかんで、照れ隠しなのか僕の両頬を摘んで横に引き延ばそうとする蓮くん。 頬が赤くなってて蕩けてるみたいな笑顔で、八重歯がちょこんと見えて。 くそ可愛くそ可愛、くっそかわ!!! 『片想い』 というのはどこからどこまでなんだろう。 好きな人の身体を手に入れたらそこで終わりじゃない。 心を手に入れても終わらない気がする。 蓮くんの気持ちが僕の気持ちと同じ熱量になるまで、きっと『片想い』は終わらないんだ。 「蓮くんっ、キスしてい?」 「い、いけど。さっきみたいなのはちょっと・・・」 ディープなのはダメってこと? 「ああいうのされると、すっげぇ堪んなくなって・・・したくなる。でもまだたぶん十分拡がってねーし、俺も奏汰とすんなら今度はちゃんと気持ち良くなりてーし。 もう少し待って」 頭をポンポンされて『待て』を命じられる。 もう少しって、後どのくらい? その間に僕は何回暴発させなきゃなんないの? 不純同姓交遊を覚えたての男子高校生の性欲を何だと思ってるの? 「気持ちいいことだけ、なら問題無いんだろ」 萎えかけている蓮くんの中心を服の上から掴んで揉むと、少し荒くなる息遣いと僕のTシャツの袖を握る手が、抑えようとした欲望を増幅させる。 僕とセックスをする為なんだってわかってる。自分でアナルを弄ることもできなかった蓮くんがそこまでしてくれるなんて、喜ぶべきなんだってわかってる。 開発係はもう終わりと宣言されて、蓮くんのお尻担当は今 僕じゃなくて開発ボックスの中に待機していたシリコンのアナルプラグ君たちで。 モヤモヤする。 僕とキスしていた1ヶ月、一緒に眠った1ヶ月、蓮くんのお尻を占領していたのはあの大中小三兄弟の黒いシリコンの塊だと思うと腹が立つ。 「今、挿入ってんの、長男? 次男? 1ヶ月も経ってるんだから末っ子ってことはないよね」 「な、に すえ・・・?」 「大中小どのプラグが挿入ってんのかって聞いてんの」 「、ああ、一番デカイやつだよ。だからコレに慣れたら、奏汰のもたぶんすんなり・・・」 「見せて。本当にちゃんと挿入ってるかどうか」 「えっ!? っちょちょ、待て!」 布団の中で蓮くんの下半身を剥く。掛け布団がベッドからずり落ちて、前を隠すように背中を丸め脚を抱えた蓮くんが壁の方を向いて、双丘の狭間に見えたのは窄まりではなく円形の黒いシリコン。 「いつ挿れてるの。お風呂でとか?」 「 ・・・うん」 「これ挿れるために中キレイにして?」 「当たり前だろ。そのままで挿れれるわけない」 憎たらしいシリコンめ。 お前のために蓮くんが尻の中を洗ってるなんてムカつくんだよ。 僕は苛立ちを込めて蓮くんの窄まりを塞ぐシリコンにデコピンをする。 「ん・・・ッ、てめ、何すんだよ!」 「蓮くんも蓮くんだよ。僕の後任がコイツだなんてあんまりだよ。えい、えいっ」 「あっ、あっ、やめ・・・っ」 黒のシリコンを指で弾く度、連動してビクッと反応する臀部。 「コイツで感じてんの? 僕が見てるのに」 「お前がやってんだろーが! まじで意味わっかんねぇ!」 シリコンを摘んで揺すると蓮くんは小刻みに震え、声を噛み殺す。 「僕がいるんだから、こんなの必要ない」 摘んだプラグを引っ張るけど咄嗟に締められた窄まりから抜けない。 蓮くんのナカでぎゅうぎゅうに締め付けられてるのは感情も感覚も持たないシリコンの塊だと理解してはいても、嫉妬で熱くなってるのか冷えきっているのか自分でもよく分からない感情が渦巻く。 服の上から蓮くんの胸の先を抓ると、身構えた蓮くんの腹に力が入って窄まりが緩む。僕はその隙を突いてプラグを一気に引き抜く。 「ぅあ゙ッ、ぁ・・・て、め」 体を震わせながら僕を睨んでも潤んだ瞳には何の威圧感も無くて、ただ僕の劣情を掻き立てるだけなのに。 彼のナカから引き抜いたプラグの一番太い部分の直径は僕の陰茎と同じくらいだ。 ぐぬぬ、中々やるなコイツ。だけど長さとカリの大きさがある僕のほうが絶対的に男として勝ってる。 自分のボトムスを下げ、僕はローションを手に取り上反った屹立に滑りを纏わせる。 「奏汰、嫌だ・・・また、痛いの・・・むり」 枕を抱き寄せ怯える蓮くんは もしかしたら僕が思っていた通り、痛いセックスがトラウマになってるのかもしれない。 ここでまた無理矢理にでも突っ込んで掻き回したならそれは悪化の一途を辿るだけで、僕との為にこの人がしてる努力をへし折ってしまう事になるかもしれない。 自身を押し込みたい衝動をぐっと抑え、ヒクつく小さな穴にプラグの先を当てゆっくり差し込む。 「ぅ・・・く、」 「そんなにコレが悦かった?」 「いい とかじゃなくて、お前と、」 うん。わかってる。わかってても、どうしようもないんだよ。蓮くんが愛おしくて優しくしてあげたいのに、ぶち壊したいって思う時があって、それが醜い嫉妬だったり子供じみた独占欲だって知ってる。 大人になれなくて、僕は蓮くんにとって悪害にしかならないかもしれない。 でもどうしても好きなんだ。大事にしたいって思ってるんだ。 「痛いことしないよ、約束する。でも我慢できないから蓮くんとしたい」 ベッドに横になり蓮くんを背中から抱き締め、閉じた彼の腿の間に自分の屹立を潜り込ませ腰を前後させる。いわゆる『素股』だ。 「ふぁ、あっ、これ・・・裏、・・・やば、」 「うん。気持ちいね、蓮くん」 抱きしめた枕に顔を埋めて こくこく、と頷いてくれる。 意外にも素直すぎる反応をしてくれる蓮くんに毒気を抜かれて自己嫌悪。 蓮くんのお尻を占領するシリコン野郎は正直言ってムカつくけど、しばらくは僕より理性的なコイツに任せた方がいいのかもしれない。 僕は溜飲を下げ蓮くんを ぎゅうっと抱きしめる。 蓮くんの桃尻を頼んだぞ、シリコン長男よ・・・

ともだちにシェアしよう!