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第25話 成長期 1
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プラグでアナル拡張していると奏汰に知られて早3週間。
性欲にすこぶる従順な奏汰は素股という技を会得して以来、取り憑かれたようにそればかりに傾倒している。
とは言っても3日に1回くらいのペースで、俺が嫌がる素振りを見せればそのペースの範囲ではなくなる。
俺の尻を塞ぐプラグを見る目に時々殺気を感じるし、奏汰を早く受け入れてやりたい。
・・・とは思ってはいる。けど毎晩ケツの中を洗ってプラグを挿れるのめんどくさいし、かといって日中挿入してるわけにもいかないし、実のところ拡張はあれからほぼ進んでいない。
シリコン長男(奏汰命名)の圧迫感にはまだ慣れないし、正直奏汰の性欲の強さに軽く引いている。
奏汰が素股で満足してるなら、なにも痛い思いをしてまでケツを使わなくてもいいんじゃないか、と思ってしまっている自分がいる。
俺はゲイだ。しかも抱かれたい側の。
そう思ってたのに、奏汰と結城さんに抱かれたことで、あの痛みがすっかりトラウマになっているらしい。
奏汰とセックスしたい気持ちはめちゃくちゃある。でも痛いのは嫌だ。
素股だって立派な性行為だ。気持ちいいし。
だから別にこのままでも・・・
「いいわけないよねぇ・・・! 僕がどれだけ我慢して蓮くんの太腿と仲良ししてるかわかってんの・・・!?」
夏休み目前の奏汰が俺の部屋で腕立て伏せをしながら鋭い目線をぶつけてくる。
「う・・・、イヤでも、奏汰もちゃんとイッてんじゃん毎回」
「そりゃそうでしょ! 蓮くんのチンコの裏だよ、太腿だよ!? バイト辞めてからいい感じに筋肉落ちてきて柔らかいし、そういうのこう、なんか萌えない!?」
「知らねぇよお前の萌えポイントなんか。つかなんで最近筋トレばっかしてんの?」
「もうすぐ夏休みだから」
「なんかあんの?」
「はあっ!? 初めて一緒に過ごす夏だよ!? 海とかプールとか行くでしょ! 鍛えてないだらしない体で蓮くんの横に立ってたくないし、蓮くんが溺れたりなんかしたら助けるっていう一大イベントがあるかもだし!」
腕立てのあとに腹筋運動をし始める奏汰。
「俺ふっつーに泳げるしたぶん溺れねぇけど。それ以上筋肉つけたらお前のほうが浮かない可能性あるぞ。気持ち悪いロマンス期待してねーで勉強しろ受験生」
ついでに言うと、なんもしなくても無駄にいい体の奏汰に筋トレはいらない気もする。鍛えなきゃいけないのは俺のほう。
バイトを辞めてからは明らかな運動不足で、筋肉量も落ちたというのに体重は変わってない。つまりは太ったってこと。海やプールになんて行きたくねんだけど。
「進学はしないからいーの。あっ、蓮くんは鍛えないでね! カチカチのお尻より今の可愛い感じのほうが僕は好きだから♡」
「可愛いってなんだよ」
でもそっか。元々女が好きな奏汰だし、どうせ触るなら柔らかいほうがいいよな・・・。
それより奏汰大学行かねんだ。知らなかった。つーか俺、奏汰の事なんも知らねぇな。幼なじみの音々の事なら何でも知ってるのに、その弟なのに奏汰の事はほとんど何も知らない。
そういえば昔、音々と俺が遊んでんの遠くからよく見てたっけ。あん時は何も思わなかったけど、今思えば少し可哀想だったかな。近所には奏汰と同い歳もいなかったし。
「一緒に遊ぼ」そう声を掛けてやればよかった。
子供の頃遊び相手がいなくて奏汰が内向的になったとしたなら多少は俺のせいでもあるよな。
そう思うと少し申し訳ない気もしないでもない。
「まあ、海くらいなら一緒に行ってやってもいい。たまには運転もしたいし」
「あ、僕 夏休み入ったらすぐ、合宿で地方の教習所行ってくるんだった。免許取ったら蓮くんを海に連れてってあげるから待っててね」
「オイ。なんで俺のが海行きてぇみたいになってんだよ」
前言撤回。くっそ生意気だなコイツ。
俺は奏汰の腹に跨って腹筋を尻でドスドスと踏む。
「オラ、オラ、もっと気合い入れてやれよ」
「ちょっと、蓮くんっ、勃っちゃうっ、勃っちゃう!」
げっっ!
慌てて立ち上がる俺の脚をホールドする奏汰。
見上げてくる表情はエサを求める大型犬のよう。その中に僅かな獰猛さが見えて、俺は息を飲む。
こうして求められるのは素直に嬉しい。
どっちかっていうと被虐志向の俺はめちゃくちゃにされたいって願望が大いにある。
「痛くしない、なら、ヤッても いいけど・・・」
「しないよ。一緒に擦るだけ」
床に膝を着いてベッドに上半身を預けると、奏汰が俺のボトムスと下着を下げる。
尻だけ露わになっているのが間抜けで恥ずかしくて、なのに奏汰にそうされて見られてると思うと腹の底が熱くなって下半身が反応してしまう。
「蓮くんも勃ってる。ほんとえっちになってきたよね、この身体」
背中に覆いかぶさる奏汰が、俺の陰茎を手のひらで包み込み指で亀頭を撫でる。
きゅ、と先のほうを潰すように摘まれて思わず声が出る。
気持ちいい。圧迫される痛みが快感だ。
だけど、今でも思い出すあの裂けるような尻の痛みは二度と味わいたくない。
「・・・っ、 ふ、ぅ」
「お尻振っちゃってどうしたの。挿れて欲しくなっちゃった?」
奏汰の指が穴の縁をなぞる。
尻の中が疼いて身震いがして、そのまま指を突っ込んでほしくなる。
ツンと指先で入り口をつつかれて、俺は不意に身構える。
「やだ、挿れんな・・・っ」
「・・・挿れないよ」
少し重くなる奏汰の声色。
違う。俺だって本当は・・・。
セックスは気持ち良いだけだと想像していた。
女性とのセックスだってそれなりだったし。俺に跨って腰を振る姿や表情を見て羨ましいとさえ思った。自分もこんな風に感じてみたい、と。
でも実際は違った。
痛くて死にそうだし、腹の中が苦しくて引き裂かれそうで。
男に突っ込まれてると思えば興奮もするし、押し出されるみたいに射精して気持ち良かった。気持ち良い以上の痛みが恐怖を生んで、奏汰との次を遠ざける。
指で弄られてるだけの時のがよっぽど悦かった。
挿れて欲しいのにチンコ恐怖症という矛盾。
奏汰とセックスしたいのに、奏汰の巨根が怖い。
「もっとしっかり脚閉じて。お尻突き出して」
「う・・・ん、 んっ、・・・ん」
後ろから会陰と嚢胞を擦って陰茎の裏に沿ったまま、俺の亀頭よりも頭が出るくらいデカい奏汰のそれ。
ヤッた2回はどちらも全部挿入ってない。
「蓮くんっ、好き・・・、好き」
振り返り見る奏汰の顔は『蓮くんに夢中です』と書いてあるようで少しほっとする。
このままでいい、わけない。
ヤリたい盛りのこいつに、いつまでも挿入ナシなんて酷だと思う。
焦りはあっても億劫でなかなか行動できなくて、それでも奏汰が我慢してくれてる事に甘えてる。
それがいつまで続くか、なんて想像できないでいる。
夏休みに入り、奏汰は地方の自動車学校の合宿へと行ってしまった。
ゼミの課題も早々に仕上げ、彼氏不在でバイトも無し、大学で寄ってくるのは女ばかりで男友達なんて一人もいない俺は暇を持て余している。
『暇』
と奏汰にメッセージを送ってみる。
『夜電話するね♡』
と即レス。
毎晩電話は掛かってくるし、こんなやり取りに意味は無い。奏汰が忙しいってのに、寂しいからってこんな意味の無いメッセージ・・・・・・
さ・び・し・い!?
は・・・、俺が・・・!? 奏汰がいなくて!?
嘘だろオイ。どうしちゃった自分。イヤイヤ、ほんの2週間ちょい奏汰に会えなくなるからって寂しいとか、俺うっざ!
つーか奏汰のヤロー合宿行って免許取ってから海なんつってたけど、その頃もう盆じゃん。クラゲ出る時期になってて海で泳げねーじゃんバカ。
「・・・いっか。どーせ暑いし、部屋で一緒にゴロゴロするだけでも・・・」
とか呟いちゃう俺なんなの!?
やばいぃぃ! 暑さで頭が沸いてる!
奏汰がいなくて寂しいのも、早く帰って来て欲しいって思うのも、あいつの体温が欲しくて堪らないのも、きっと持て余す暇と猛暑のせいだ。
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