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第31話 NO SEX NO LIFE 1

******** 遡ること8月の上旬。 『ゼミ飲み会』と称したただのバーベキューで俺に絡んできたチャラそうな赤髪の男 五十嵐。 「塩田って、男好きでしょ?」 いきなりそんなことを聞かれたのは初めてだった。 嫌な汗がどっと出た。 「い、いや?」 「俺には隠せないよ。だって同じだもん、俺もゲイ。エッチ大好きバリウケでーす」 軽く衝撃。 ろくに話したこともない俺に隠しもせず言うことじゃない、と思った。 うちのゼミは結構緩くて課題さえこなせば良くて、公認会計士を目指してる連中が多いわりには集まって飲む、がメインの飲みサーに近い感じで。俺は飲みにはほぼ参加してなかったけど。 正直こんなとこ入んなきゃ良かったと思ってたくらいだった。 だけど教授の解説が解りやすかったり理論重視の指導法が面白くて、ゼミ生の公認会計士資格取得実績も高くて。 何より鬱陶しい女たちがいないのがいいところでもある。いるのは超がつくほど真面目な女が1人だけで、男だらけの飲み会なんかに参加するようなキャラじゃない。 五十嵐みたいなチャラいのが何人かいるせいで無駄に飲みサーみたいになってるけど、こういう奴らほどデキる人間で世の中は公平じゃない。 「ね、俺の勘、当たってるだろ? 塩田もゲイなんでしょ?」 そうだった。俺いま五十嵐になんか知らねえけど絡まれてるんだった。 にっこり悪気の無い笑顔に対して、「そうだよ」って答えてもいいのか? 「ほら、ココ」 俺のうなじの辺りを指先で ちょん、と触る五十嵐。 「キスマ付いてる。バックで掘られてなきゃこんなとこに無いだろ、フツー」 俺は慌てて首の後ろを片手で隠すけど、「今更過ぎ」と五十嵐は笑う。 くっそ奏汰のやろー、見えるとこにつけんなって言ったのに! 確かに俺からは見えねーとこだけども! 「俺バンソーコー持ってるから貼っといてあげる。丸見えよりはいいと思うよ」 「あ・・・りがと」 「んーん、・・・はい。これで見えない」 五十嵐は貼ってくれたバンソーコーの上を撫でる。 「ね、蓮って呼んでいい? 俺さ、セフレはいっぱいいるんだけど、友だちいないんだよね。塩田、友だちになってくんない?」 「え、うん」 「やった♡実はずっと気になってたんだ蓮のこと。周りに女はべらせてんのに女好きには見えないし寧ろ迷惑そうだったし。逆に男避けてるぽいとこあったし。もしかしてお仲間かもーって」 鋭い。けど同性を避けてた訳じゃなくて、どっちかっていうと避けられてたってのが正解だけど。 「あ、ソーセージ焼けたよ。はい」 焼けたソーセージを乗せた紙皿を差し出す五十嵐は嬉しそうだ。肌が綺麗で睫毛が長い。目も大きくて女みたいな顔立ち。長身だからパッと見はカッコイイって印象だけど、顔だけ見ればかなり可愛いと思う。 「さんきゅ」 友だち、か。俺にはそう呼べる相手は幼なじみの音々しかいない。 同性なら五十嵐が初めて。なんか恥ずかしいけど、今までこういうの無かったから素直に俺も嬉しい。 しかも同じゲイで抱かれる側なんて、親近感しかない。俺たちが仲良くなるのは秒だった。 自分が隠さなきゃいけないと思ってた部分と同じものを持つ五十嵐だけど、性的にはかなりオープンで特定の相手はいないらしい。フィーリングとかいう曖昧な基準でヤリたいときにヤリたい相手を見つけてるんだとか。 そこは理解できなかったけど、いい奴ではある。 ゲイってことに負い目も感じてなくて、それどころか自分の外見に自信があって最大限活用してる。 「人生一度きりなんだから楽しく気持ち良く生きなきゃ」がモットーで、そういう生き方ができるのは少し羨ましい。カッコイイ、とも思う。 「ふ・・・、ぅ、 うっ」 「腕齧っちゃダメだよ蓮くん。傷になる」 俺に挿入ったままの奏汰が、仰向けの俺の頭を撫でる。 傷になるって言うなら俺の体に吸い付くんじゃねえ、と思ってはみるけどひとことでも発せば大きな喘ぎになりそうで言えない。 「声、聞きたいな。久しぶりの蓮くんのエッチい声・・・」 「んッ、んぅ~っ」 両乳首を捏ねられて、俺は噛んでいないほうの手で咄嗟に奏汰の手を払い除ける。 「さっきもそうだったけど、乳首嫌なの? 気持ち良くない?」 気持ち良いか、よくわからない。擽ったくてゾクゾクはする。おそらくはココも性感帯になりうるんだろう。 でも、奏汰には触られたくない。巨乳好きのこいつが、ただの板に豆粒がのっただけの男の胸に物足りなさを感じてるのがわかるから。 こんなとこまで開発されて「触って」なんて言うようになってしまったら、その時の奏汰の気持ちを考えたら・・・奏汰が不憫でいたたまれないことこの上無い。 夏は奏汰の運転で海までドライブに行ったっきり、特に予定が無い日のほとんどを俺の部屋で過ごした。 五十嵐が時々訪ねてきてその度に奏汰の機嫌が悪かった気がするけど、俺にとっては例年より楽しい夏休みだった。 奏汰は宿題と警察官試験の勉強に追われて死にそうになってたけど。 新学期が始まり奏汰とのセックスも挿入が当たり前になった秋。 学祭や体育祭、試験を目前にした奏汰は大忙しで、うちに泊まりに来る以外は一緒に過ごすことが少なくなった。 俺はというと、母がしょっちゅう中谷家への食材提供をしているらしくおばちゃんも相変わらずの親切で、奏汰が不在でも夕飯をご馳走になってるままで。 ゼミの課題なんかは五十嵐がうちに来て一緒にやるようになったし、同じ会計士を目指してることもあってかなり仲良くなったと思う。五十嵐は俺が奏汰と付き合ってるってのも知ってる。 夕食後家へ帰ると、パパ活とやらで夕飯を済ませてきた五十嵐から連絡があり、今日も奏汰が来るまで俺の家に入り浸る。 「今日も奏汰遅いね~。俺とばっかじゃ蓮、寂しいね」 「別に。この歳で寂しいとかねえだろ。お前が頻繁に来るから暇もしてねーし」 俺は奏汰と寝てる間だけでも一緒にいれたらそれで十分だし。 「そうかなぁ? 俺だったらもし恋人にほっとかれたら寂しいけど。まあ作る気もないけどさ」 何かをする訳でもなく五十嵐はベッドでゴロゴロと転がる。 「・・・あのさぁ、お前よくそんな・・・その、他人が、ヤッ・・・てるとこで」 「あー、俺は気になんないけど。蓮は気になる? 昨日もここで奏汰にケツ穴舐められたのに、って?」 「ばっ! ばばっ、バカ言ってんなよ! そんな露骨にっ。それにここ最近はヤッてねえっつの!」 「あいつ疲れて帰ってくるもんね。でも蓮だって好きでしょセックス。奏汰にちょー愛されてそ。羨ましいわ」 あ、愛されてそう? そう見えんの? なんか、すげー恥ずかしい。そしてちょっと嬉しい。 「つかお前、男にモテてんなら恋人なんて作ろうと思えばすぐできんじゃん」 そんなに世にホモが蔓延ってるようにも思えないけど、毎回違う相手見つけてセックス三昧なんて、五十嵐にはきっと男を寄せ付ける才能があるか、特殊なフェロモンを放出してるからに違いない。 顔がいいってのもあるかもだけど、たぶんそれだけじゃ普通の男は同じ男を抱けないんじゃないかと思うけど。 「恋人ねぇ。・・・蓮がなってくれる?」 「いや無理だろ。俺自分より体デカイ奴抱ける気しない」 「見て。ちんぽも結構デカイよ」 ボトムスのジップを下げて下着をずらす五十嵐。 「ちょっ、なにっ、何してんのお前! 見せんなよ!」 いらねえ! 見慣れてる奏汰のデカチンすらまともに見れねーのに、他の男のなんて見れねーっつの! 俺は両手で顔を覆って俯く。 最悪。まあまあデカイの、ちょっとだけ見ちゃったよ・・・。 「え、なになにそのかわいー反応。蓮てマジピュアだよね。ほら見てよ。俺 突かれてるときビンビンになったコレ揺らしながらアンアン言ってんだよ。やらしくない?」 「知らねーよ! いいからもうしまえよ!」 「ほらほら~、見てよ~」 顔を覆ってて見えないけど、俺の前で五十嵐の気配と声がする。 ああくっそ! これだからビッチは。恥もクソもあったもんじゃ・・・ 「何、してるの?」 重低音の声がして、俺は顔を上げる。 五十嵐の猥褻物の横には、明らかな怒りに満ちた奏汰の顔。 なんでそんな怒って・・・ 俺を睨む奏汰と五十嵐のソコを交互に見て嫌な予感。 「ちち違うっ、奏汰が思ってるようなこと、一切ねぇから! なっ!? 五十嵐!?」 「そうだよ。俺はただ蓮にちょこっと尺ってもらおっかなって思っただけだから♡」 ウフ、と自分の頬を両手で包む五十嵐。 くっっっっそ可愛くねぇ! 笑えねー冗談言うな!! 「ふーーーーーん。そうなんだ。僕にフェラチオしてくれたこともないのに? 本当は蓮くん、ちんこ舐めたくてしょうがなかったの?」 「そうみたい。もー蓮てば素直じゃないんだから」 違う! お前ら勝手に俺をフェラしたいけどできなかったキャラにすんじゃねえ!

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