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第37話 春の日 1
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「蓮くん・・・うう・・・、やだよう・・・寂しいよう」
警察学校の入校式の日、約2週間ぶりに会った奏汰は人目も気にせず子供みたいに俺に抱きついて泣く。
「奏汰やめなさい! 蓮くん困ってるじゃない!」
「いいよおばちゃん。少しくらいなら」
入校前から奏汰の宿舎生活は始まっていて、会えるのが久しぶりだった俺はつい甘くなってしまう。
それどころかこのウザイくらいの温もりが恋しかっただなんて、俺は奏汰以上に重症な気がする。
「ほらもう泣くなよ。また1週間後には会えるんだろ?」
「・・・うん」
ヨシヨシ、と奏汰の背中を撫でる。
「制服姿、カッコイイと思うぞ? これからそのカッコで犯罪抑止すんだろ、泣いててどうすんだ」
「うう・・・これは式典用の制服だよ・・・。普段はこんなんじゃないよ・・・」
「そーかよ、だったら早く違う制服も見せろよ。楽しみにしてるから」
「・・・うん。・・・うぅ、真冬に食べたあの不味い素麺また食べたいな」
「俺の失敗作をディスる余裕があるなら大丈夫だな。ほらもう行けよ!」
うん、とべソをかいたまま離れ、何度も振り返りながら校舎へと入って行く。
「情けないわよねぇ、音々の弟だとは思えないわ。蓮くん大変だったでしょ、あんなのの相手毎日させちゃっててごめんね」
奏汰の後ろ姿を見ながらおばちゃんが溜息を吐く。
「慣れると案外可愛いもんだったよ。音々よりは凶暴じゃなかったし」
「あらそお? じゃあ将来、蓮くんのお嫁さん候補にしてくれたりする?」
「え・・・」
おばちゃん、なんて・・・?
「ウソウソ! 冗談よ! 蓮くんこんなにカッコイイんだもの、可愛い彼女とかいるわよね。奏汰もここでビシバシ鍛えてもらって少しは男らしくなってもらわなきゃ!」
「そ、そうだね」
笑うおばちゃんの横で笑えない俺。
び・・・っくり、した。奏汰と俺の関係に気付いているのかと思った。
でも違うみたいだ。もしおばちゃんが気付いているならきっと、こんな風に笑い飛ばせないだろうから。
「さてと、私たちも帰りましょっか。今日はタカシさんが夕飯作ってくれる約束なの。蓮くんも連れて来るって言ってあるから」
「は? ちょ、俺ふたりの邪魔できないよ! 遠慮しとく・・・」
「いいからいいから! 蓮くんも家族みたいなもんじゃない。私だって奏汰がちゃんとやって行けるか本当は不安なの、寂しいの。だから今日だけ付き合ってよね!」
もぉ~、奏汰がいねぇのにタカシさんとおばちゃんと三人で食事とか気まずいって!
とか思ってたけど、気まずさを誤魔化す為に飲んだ酒が功を奏して、何だかんだで楽しい夕食になった。
タカシさんのちょっとだけ気取った感じの手料理も美味しくて、おばちゃんの明るさにも救われて、奏汰に今まで通り会えなくなった寂しさが少し紛れた気がする。
奏汰みたいに泣く程じゃないけど、俺もあいつとは離れたくなかったらしい。
まあ週末には またすぐに会えるんだけど。
「はあ~・・・、くらくらするぅ~・・・」
家に帰ってベッドに寝転がるともう動きたくなくて、風呂は朝に入ることにして上着とボトムスを脱いでベッドから蹴り落とし布団を被る。
アルコールのせいで、心臓がドクドク鳴ってるし自分の呼吸が熱い。頭もふわふわするし、この感覚・・・奏汰にぎゅうってされた時となんか似てる気がする。
学ランじゃない制服姿の奏汰、大人っぽくてカッコ良かった。なんだかいきなり追い越されてすげー置いていかれた気分。
少数だけど女の子もいたし、たぶんあの中では奏汰、モテたりすんだろうな。
「今はまだ、俺の・・・だよな?」
今はまだ、離れたくないって泣きついてくれる。いつまでそうしてくれるか わからないけど、あの腕の強さは俺だけのものだってまだ思っていたい。
すっかり壁側に寄るクセがついてしまって、シングルサイズのベッドなのに奏汰が隣にいないと広く感じる。
あいつが警察学校の宿舎に移って2週間近く経つのに、シーツも何も変えることが出来ないのは、あいつの匂いが無くなるのが嫌だから。
なんなんだよ、この女々しい気持ちは! 別れた訳でもないのに、なんで俺はこんな気持ちになってんだ・・・。
俺はイヤホンを着けて、『寂しい時はこれ聞いてね!』と奏汰が行く前に送って来たボイスメッセージを再生する。
『好きだよ蓮くん。大好きだよ、蓮くん』
それを繰り返すだけで、対して面白味もクソもない。それでも目を閉じて何度もリピートしているうちに、奏汰がすぐ傍で囁いているような気になって、あいつの触れ方を覚えている体が知らないうちに反応してしまう。
「奏汰・・・」
下腹部に手を伸ばし、下着の上をあいつがいつもそうするように会陰から陰嚢の真ん中を通って陰茎の裏を先端まで指で辿る。奏汰の指のほうが太くて手のひらは熱いと体は覚えていて、自分の手だとどうしても物足りない。
それでも止められなくなって、何度もそうするうちに先端の部分の布は濡れてくる。
ひとりでするのってどうやるんだっけ。と戸惑うほど奏汰の触れ方に慣れた体。中途半端な快感がもどかしくて、布団を剥いで下着を脱ぎ壁に凭れかかって脚を左右に開く。
屹立を握り上下に擦っても達するには刺激が足りなくて、じわじわと熱を溜める後ろがヒクついてる。
触って、指を突っ込んでしまおうか。
でも奏汰がいないから中の準備をしていない。このまま突っ込んだら大変なことになる。それは無理。
「ぅ・・・、っ・・・」
なんで、イけない・・・。ひとりでするのだって久しぶりですぐにイッてもおかしくないはずなのに。
『蓮くん、大好きだよ』
イヤホンから聞こえる奏汰の声が耳の奥を擽る。
嫌だ、声だけじゃ満たされない。傍にいてほしい触ってほしい。お前がいないと俺、ダメになってる。こんな風に依存したくなかったのに・・・
「そんなんじゃ一生イけないんじゃない?」
プツリと奏汰の声が途切れてイヤホンが落ち、俺は咄嗟に顔を上げる。
「いが、ら・・・」
五十嵐! やば、俺玄関の鍵閉め忘れてた!
「ピンポンしたけど返事無いしいつも通り勝手に上がっちゃったけど、まさか部屋のドア開けっ放しでオナってるとはね」
顔を寄せてくる五十嵐。あまりの恥ずかしさに俺は横を向く。
「蓮、オナニーしたことないの? 先っぽ真っ赤んなってるじゃん」
「あるっ! つかあともうちょいで・・・」
「ハイハイ。じゃあ手伝ってあげる」
五十嵐が俺の屹立を握る。
「ぎょわっ! いらねぇし!! 俺、奏汰じゃねえと無理!」
「遠慮すんなって。俺イかせるの上手いからさ」
「あっ?! ちょ・・・っ」
「うっわ蓮てばガマン汁多くね? ぬるっぬるじゃん」
括れを親指と人差し指の輪で引っ掛けるように擦られ、先走りが溢れる口に爪を立てられて、痛みと強すぎる快感でガクガクと腰が浮く。
「ひ・・・っ、いぁ・・・っ」
自分の方へと飛んだ白濁が顎にあたってポタリと落ちる。奏汰の入校式の為に着ていたクレリックシャツに飛び散った白い液体を見て「蓮のえっち~」と五十嵐が言う。
「気持ち良かっただろ? 奏汰じゃなくても無理じゃないじゃん」
「そりゃ、あんな手コキされたら誰だって・・・」
シャツを脱いで賢者タイムに入ると、冷静になった体が冷たくなってくる。
五十嵐にオナニー見られて手伝わせたなんて、奏汰に知られたらかなりマズイ事になるのでは・・・
やばい、どうしよう。完っっ全に酔っ払ってて鍵かけ忘れた俺の不注意だ。
「五十嵐クン、どうかこの事は内密に。つーか無かった事に・・・」
「蓮ってさ、イク時結構だらしないアヘ顔すんだね。えろくてかーわい♡」
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