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07 この世界で一番、

「………へ? え、所沢、くん…今、なんて、」 「っだぁからぁ、酒やめる代わりにっ、好きなやついりゅか教えろってんだよぉ…!!」 「え、いやだからどうして突然そんなことっ…しかもいま僕のこと…っ、すぐるって……あっ、わかった! 所沢くん見た目にはわかりづらいけど、やっぱりかなり本格的に酔っぱらっちゃってるんだねっ…ちょっと待ってて、今コップに水入れてくるから…!」 「っ――…」  一世一代。  酒の力を借りてだけど、勇気をもって聞いたオレの『好きなやついるのか?』の問いかけに、けれどもすぐるは一瞬驚いたものの、すぐに酔っ払いの戯言として片付けだし。  そして「お水っお水っ…」とすくっと立ち上がり、オレを素通りしようしたもんだから、  だから――  グイっっ!! ドターンっっ…!!! 「……ったた……いきなり引っ張ってどうしたのさ、所沢く…」 「っ……オマエ、が、そうやってしらばっくれても…お、オレはっ」 「…ところざわ、くん…?」 「オレはっすぐるの好きな奴が誰か知ってるんだからなっ…!!!」 「え……」  通り過ぎようとしたすぐるの腕を思いっきり引っ張って、オレはそのまま勢いよく、フローリングに大柄なコイツを叩きつけるようにして押し倒す。  馬乗りみたいになった体勢のまま、オレが上からそう叫ぶと。 「あ……っ、そっか、バレバレだったのかぁ……えっと、うんあのね、僕の好きな人は…」 「っ、」  オレが何でこんなに鬼気迫るかの如く『すぐるの好きな相手』についてのアレコレを聞いているのか、その心情なんてまったく察しもせずにへらっと、いつものふにゃっとした笑顔で答えようとするすぐるに  ――オレはもう、ほんとのほんとに、耐えられなくなり。 「うっせぇよ!! どうせオマエの好きな奴なんて『まやりん☆』以外いないんだろっ!!」 「へっ、」 「オマエは『まやりん☆』のことが、この世界で一番大好きなんだろっ!! んなのこっちは最初から知ってんだよ!!」 「…え、ちょ、所沢く」 「でもっでもなぁ…!!」 「オレのほうが、『まやりん☆』よりもずっとずっとすぐるのことが大好きなんだからなぁっ!!!」 「っ、ところざわく……んんんっ!!?」 「……ぷはぁっ…!! いいかよく聞けオタク野郎!! この世界で一番オマエのことを愛してやれんのはこのオレだ!! オレは園田すぐるのことを世界で一番愛してるっ!!」 「あいっ、え、あ、」 「だからすぐるっ!!」 「はっはい…!!?」 「これから先はっ『まやりん☆』よりも、オレを推せっっ!!! わかったか!!!」 「――…りょ、了解であり、ます…真哉くん」 「よしっならいいっ!!!」 「……え、えっと、でもあのねっ…そもそも僕の好きな人ってのはっ……んんんんっ!!??」  ……酒の力とは、何と偉大なものなのか。  ずっとくすぶっていた想いを爆発させるかのように、オレは好きな相手に対し『自分を推せ!!』との、珍妙であり得なさすぎる告白劇をかましたのち。  色気もへったくれもないキスを一度では飽き足らず、もう一度今度は噛みつくみたいな激しいのを、勢いよくすぐるの唇に向かいお見舞いしたのだった。  ただ――

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