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第9話 疼く傷 参

夕と陽のふたりは、俺の要望通りにしてくれた。 陽は、キス。 舌を絡め、唇を甘噛みし、たまに耳や、眉にも。 手を伸ばし、乳首も弄られる。 俺は、何もしない。 ベッドの上、至近距離で自慰をする夕を見ているだけ。 「…んっ…ふ……あっ……」 着物の合わせを大きく左右に広げ、脚をM字に開いて、夕は自分のものを扱く。剃毛されたそこは、赤く熱くなっているのが、なおいやらしい。うっとりと俺の方を見ながら、夕は昴ぶる自分のそこを擦り上げる。 「はぁ…んっ…う……っんっ」 なまめかしい夕を見ながら、陽にいやらしいキスをされ、EDだったことなど嘘のように、俺のものは順調に勃ちあがりつつあった。 「日比野さま……っ…んっぁ……あんっ…」 夕に名前を呼ばれて、思わず自分の股間に手をのばしかけた。 しかし陽の手に強く捕まれ、それは阻まれた。 「いけません、日比野さま……ご自分で触っては…」 陽は耳元に息を吹きかけながら俺を制し、また唇を重ねた。そして、俺のガウンの合わせを開いて、中を確認するようにのぞきこんだ。 「もう少し…もう少しだけ我慢してください…」 陽は舌を絡めながら、俺の乳首を強く摘まんだ。 「……っ日比野さまぁ…っ…こっち……見…てっ…」 夕が甘ったるい声で俺を呼んだ。陽が俺の顔をぎゅっと横に向かせ、キスをする。それを見て、また夕が切ない声を上げる。 「ん…っ…もう……っイく……うっ…ん」 「日比野さま…」 「あっ……ああっんっ……」 夕が全身をびくつかせて、射精した。 向かい合って座っている俺のそこに、夕の精液が届いた。 それを見届けて、陽が俺の前に回り込んだ。いきなり陽の口に含まれ、腰がびくんと跳ね上がった。 一般の風俗でされるフェラとは、格段にレベルが違った。 意識を失いそうになるほどの快感に襲われ、気がつくと陽の口のなかに射精していた。 また意識を失っていたらしい。 目が覚めると、横たわった俺のうえにこちらを向いた全裸の陽が跨がっていた。陽のそこもやはり剃毛されていて、繋がっているところは肌が触れる面積が多く、とんでもなく気持ちがいい。 騎乗位で陽のなかに俺の性器は咥えこまれている。ゆっくりと陽の腰が上下に動き出した。 頭上から夕の声がする。 「お目覚めですか」 逆さまに覗きこみ、夕は俺の唇を塞いだ。 ベッドがぎしっと鳴った。 信じられない光景が目に飛び込んできた。 裸の夕が、俺の顔を跨いでいた。目の前に、昴ぶった夕の性器がある。 「…召し上がって…いただけませんか?」 考える間もなく、俺は夕のそこを咥えた。 熱をもった性器を、無心でしゃぶった。 耳には、陽の低いうめき声と、夕のいくらか高い喘ぎ声が、ハーモニーとなって聞こえてきていた。 ここにきた理由など、もう忘れた。 ただ、身体の熱に任せた。 男にしか欲情しない。 そんな身体をふたりの美しい娼夫が思い出させてくれた。 親友の顔が浮かんだ。 夜が明けたら、勇気を出してみようか。 次に目が覚めた時は、朝だった。 夕も、陽もいなかった。 ベッドの枕元に置かれた服を身につけると、昨夜のことが幻のように感じられた。 首筋に残るキスマークだけが、あったことは現実なんだと思わせてくれた。 部屋を出ると、廊下は静まりかえっていた。 下腹部のじんわりとした熱が、まだ残っている。 玄関には、俺の靴だけが並んでいた。昨夜の間に磨かれていたのか、来たときよりも綺麗になっていた。 靴を履いて、屋敷を出た。 昨夜のひどい雨はすっかり上がり、空は真っ青だった。 門を出たところで、暖かい風がふわりと背後から吹いてきた。 振り返ると、あの桜の樹のしたに、陽が頭を下げて見送っていた。 夕がいない、と思ったが、門の外に待たせた車を見つけて、俺はすぐそちらに気を取られた。 車に乗り込み、運転手がドアを締めた。 滑るように走り出した車の後部座席から、もう一度屋敷を振り返った。 昨夜、灯りのついていた門の前で、頭を下げて見送る夕の姿が見えた。 俺は、親友の番号を携帯画面に呼び出した。 「もしもし…、日比野だけど。今日、会えるかな。話があるんだ」

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