9 / 25
第9話 疼く傷 参
夕と陽のふたりは、俺の要望通りにしてくれた。
陽は、キス。
舌を絡め、唇を甘噛みし、たまに耳や、眉にも。
手を伸ばし、乳首も弄られる。
俺は、何もしない。
ベッドの上、至近距離で自慰をする夕を見ているだけ。
「…んっ…ふ……あっ……」
着物の合わせを大きく左右に広げ、脚をM字に開いて、夕は自分のものを扱く。剃毛されたそこは、赤く熱くなっているのが、なおいやらしい。うっとりと俺の方を見ながら、夕は昴ぶる自分のそこを擦り上げる。
「はぁ…んっ…う……っんっ」
なまめかしい夕を見ながら、陽にいやらしいキスをされ、EDだったことなど嘘のように、俺のものは順調に勃ちあがりつつあった。
「日比野さま……っ…んっぁ……あんっ…」
夕に名前を呼ばれて、思わず自分の股間に手をのばしかけた。
しかし陽の手に強く捕まれ、それは阻まれた。
「いけません、日比野さま……ご自分で触っては…」
陽は耳元に息を吹きかけながら俺を制し、また唇を重ねた。そして、俺のガウンの合わせを開いて、中を確認するようにのぞきこんだ。
「もう少し…もう少しだけ我慢してください…」
陽は舌を絡めながら、俺の乳首を強く摘まんだ。
「……っ日比野さまぁ…っ…こっち……見…てっ…」
夕が甘ったるい声で俺を呼んだ。陽が俺の顔をぎゅっと横に向かせ、キスをする。それを見て、また夕が切ない声を上げる。
「ん…っ…もう……っイく……うっ…ん」
「日比野さま…」
「あっ……ああっんっ……」
夕が全身をびくつかせて、射精した。
向かい合って座っている俺のそこに、夕の精液が届いた。
それを見届けて、陽が俺の前に回り込んだ。いきなり陽の口に含まれ、腰がびくんと跳ね上がった。
一般の風俗でされるフェラとは、格段にレベルが違った。
意識を失いそうになるほどの快感に襲われ、気がつくと陽の口のなかに射精していた。
また意識を失っていたらしい。
目が覚めると、横たわった俺のうえにこちらを向いた全裸の陽が跨がっていた。陽のそこもやはり剃毛されていて、繋がっているところは肌が触れる面積が多く、とんでもなく気持ちがいい。
騎乗位で陽のなかに俺の性器は咥えこまれている。ゆっくりと陽の腰が上下に動き出した。
頭上から夕の声がする。
「お目覚めですか」
逆さまに覗きこみ、夕は俺の唇を塞いだ。
ベッドがぎしっと鳴った。
信じられない光景が目に飛び込んできた。
裸の夕が、俺の顔を跨いでいた。目の前に、昴ぶった夕の性器がある。
「…召し上がって…いただけませんか?」
考える間もなく、俺は夕のそこを咥えた。
熱をもった性器を、無心でしゃぶった。
耳には、陽の低いうめき声と、夕のいくらか高い喘ぎ声が、ハーモニーとなって聞こえてきていた。
ここにきた理由など、もう忘れた。
ただ、身体の熱に任せた。
男にしか欲情しない。
そんな身体をふたりの美しい娼夫が思い出させてくれた。
親友の顔が浮かんだ。
夜が明けたら、勇気を出してみようか。
次に目が覚めた時は、朝だった。
夕も、陽もいなかった。
ベッドの枕元に置かれた服を身につけると、昨夜のことが幻のように感じられた。
首筋に残るキスマークだけが、あったことは現実なんだと思わせてくれた。
部屋を出ると、廊下は静まりかえっていた。
下腹部のじんわりとした熱が、まだ残っている。
玄関には、俺の靴だけが並んでいた。昨夜の間に磨かれていたのか、来たときよりも綺麗になっていた。
靴を履いて、屋敷を出た。
昨夜のひどい雨はすっかり上がり、空は真っ青だった。
門を出たところで、暖かい風がふわりと背後から吹いてきた。
振り返ると、あの桜の樹のしたに、陽が頭を下げて見送っていた。
夕がいない、と思ったが、門の外に待たせた車を見つけて、俺はすぐそちらに気を取られた。
車に乗り込み、運転手がドアを締めた。
滑るように走り出した車の後部座席から、もう一度屋敷を振り返った。
昨夜、灯りのついていた門の前で、頭を下げて見送る夕の姿が見えた。
俺は、親友の番号を携帯画面に呼び出した。
「もしもし…、日比野だけど。今日、会えるかな。話があるんだ」
ともだちにシェアしよう!