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第5話
ぷちん、と聞こえたのは先輩のシャツのボタンが開く音だったのか、俺の理性の緒が切れた音だったのか――――
――あ。乳首見えた。開発しがいのありそうな小ぶりの、ぷっくりした――
「秋峰先ぱぁーい!」
「冬治!?」
頭がぐわんぐわんする。
ろくに思考が働かず、本能のまま掘りごたつ型のテーブル下に潜り込み、そこから先輩の胸の中へダイブした。
「おまっ、馬鹿……! 何をして、うわぁっ!」
身長百八センチ・体重八十キロ超えの柔道部員にふいうちで全力タックルを受けて堪えきれるはずもなく、畳にドターンと二人で倒れ込んだ。
「冬治先輩! 何してるんすか、主将が圧死しますよ!」
「アハハハ。おい、あんまバカ騒ぎすんなよぉ。お店に迷惑かかるから」
いつもはわりと厳しめな三年の先鋒・和田さんもニコニコ笑って、あつあつの鍋をかっ込み、熱い!と騒いでいる。それから眼鏡が曇ったことを大笑いして何コレ〜、とはしゃいで、何かがおかしい。
俺に下敷きにされたままの先輩が、副将に手を伸ばして呻いた。
「天野、冬治が変だ。起きねぇ、体がやたらあちぃし」
「あきみねさーん」
俺は起きてますよ、と伝えようとしたが、口がむにゃむにゃしてうまく喋れなかった。
頬が先輩の雄っぱいに触れて、未知の幸福感に包まれていたからかもしれない。
先輩に言われて辺りをキョロキョロした天野副将が、俺のオレンジジュースを飲んで顔をしかめた。
「うわっこれ酒じゃん、店員さん隣の部屋のと間違えたんじゃない?」
「なるほどな……俺のグレープソーダもか?」
「チューハイっぽい」
暑かったのはそのせいかと呟いて、先輩は俺の頬を軽く叩いた。
「おーい冬治。大丈夫か? 吐き気はないか?」
こくこくと頷いて先輩の腰に腕を回す。すると、天野さんが笑って俺の頬を突っついてきた。
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