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第24話

「名前も知らない人と同居できる図太さは、ある意味飛露喜に対して失礼に値するかも! いいじゃない! 向こうだって利用しようとしてるんだから、こっちもそのくらいで!!」  「稼ぐ割に天然というか、ポンコツというか」座り直した義母がさらりという。 「それほどあの子が無茶なことして貴方に近づいたんでしょうけど」 「……」 「心当たり、あったからさっきあれだけ動揺しちゃったのよね?」  黙って頷く田淵。  ——トラウマレベルのものだ、あの荷物の中身は。 「それで? どうしてここへ来たの」 「——本当はお義母さんの話を聞く前までは、リセットをするためというか、宣言をするために来たっていうか」  義母は田淵のゆったり話す言葉を遮らず、急かさずに待つ。 「お義母さんの話してた通り、二人で解決させたいって思って来たんだと思う。たしかに、僕は知らないことが多すぎた。……でも、僕、言ったでしょ? 毎日充実してるって。そこに嘘はないんだよ」 (盗撮もされてたみたいだけど) 「だからさ、黒田君に直接話を聞いて、本当に利用されてるだけなら、それでもいい。でも、僕に対して何も思うところがないのなら、これからも友人として、付き合ってもらいたい……かも」  「お義母さんには悪いけど」田淵は凛とした眼差しで義母を見据えた。自分でも自覚できないほど、先刻の打ち拉がれていた気持ちとは真逆のところに気持ちがあるらしい。 「逃げずに向き合おうって、思いたかったから、まず……ずっと苦手だったお義母さんのいる此処に帰って——きました」  握り拳に力が入りながら、「けじめのつもりです」そこへ視線を落とす。 「へぇ……」 「……」 「——あの子の母親として、お礼を言わなきゃね」   「見放さないでくれて、ありがとう」と義母は頭を深く下げた。  今日は義母らしくない言動ばかりで頭がパンク寸前だが、目頭を熱くさせて「本当は逃げようと思ったことがある」と心の内を明かす。 「いいのよ、それくらい。あの子の方がよっぽどサイコパスなことしてるんでしょ!!」 「……」 「よしよし! 今日は泊まって行きなさい!!」 (お父さんが僕の居場所を知ってることは言わない方がいいな)  「お父さんが帰ってきたら、三人仲良く晩酌でもしましょ!!」という義母の表情の理由が分からないが、優しく微笑んでいた。柔和という言葉が似合わない義母も、この日の笑みだけは撤回せざるを得ない。  今考えれば、義母の多少強引なところは黒田がちゃんと受け継いでいる。  ——それと、なんだかんだ、丸く収める力も。    

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