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第44話

 「移り香?!」慌てた黒田を見ても、もう止まらない。 「昨日らって、連絡の一本も来ないから・・・・・・寂しくなって、飛露喜君の匂いがする部屋でさりょーしてたら、幸せなきうんになれて、そのまま寝ちゃってらのに」  「起きたら、最悪なクサイ匂いして。飛露喜君、僕、しろと、しろとするから、どいて!!」組み敷かれたままの田淵がじたばたと暴れだす。 「だーめ。ヒロキさんは此処で、俺と今から仲直りえっちするの」 「絶対やら」 「――、可愛いけど、拒否は・・・・・・。俺、怖くなっちゃうよ?」  「それもやら」田淵は頑然という。 「今日は強情だね」 「僕が嫉妬してやってるんら! もうちょっと僕のご機嫌取りして!!」 「ふふ、はいはい分かりましたから。俺とえっち、してください」 「・・・・・・、今まで何してたのか、教えてくれたら」 「え。今の状況で言っても、きっと忘れてるよ?」  「ヒロキさん何かシラフじゃないし」黒田はまた優しく微笑み、大きな掌で田淵の頬を包んだ。 「忘れらい!! 早くいって!」 「――はぁ、我儘ヒロキさんも可愛いから言っちゃう」  そうして、事のあらましをつらつらと黒田は暴露してくれた。 「――はぁ!? どいつもこいつも人間ってもんがらってらい!!」 「・・・・・・顔真っ赤にして、酒飲みの風情してるよ?」  気が大きくなっている田淵を宥める。しかし、味方で居てくれる安心は計りしれず、愚痴を溢す田淵を愛でていた。  「で、僕のところには誰も来てないけど・・・・・・その秘書は無能らのかー?」けたけたと笑いながら匂いを移染させた女を嘲笑う。 「もうその人ことは置いておいて、そろそろ・・・・・・ね?」  田淵が健忘したように幼く笑っているところを、黒田は射抜くように見つめる。  「昨日は抱けなかったから――今から抱いてもいいですか?」男である黒田に妖艶さを感じて、田淵は一瞬でその視線から離れられなくなった。  しかし、最後まで保つどころか、前戯の序盤で気持ち悪さを訴えた。  黒田の介抱虚しく、便所で嘔吐を繰り返す。 「ごえんなさいぃ・・・・・・僕が、いたずらしたからバチがあたったんだぁ」  気持ち悪いのと、酔いと、さっきの甘さにやられて、胃が燃えるような熱さで悶え苦しむ。 「いたずらかぁ、俺を邪険にしたのは俺のせいでもあるから、もう怒ってないよ。だから、吐いてしまおう?」 「見ないで!! 吐く時は出てて――」

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