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第46話――黒田裕子――

 早朝からインターホンで起こされる。少しだけ気分を悪くして、玄関のドアを開ける。 「――はい」 「田淵ヒロキ様はご在宅で?」 (挨拶もなしに用件を言う辺り・・・・・・黒田の人間ね)  タイトスーツを身にまとい、綺麗な御御足を存分に晒すその女は、勝ち気で続ける。「田淵様と仕事の話をさせていただきたいのですけれど」。 「あら、うちの子はとっくに自立しててよ」 「・・・・・・では、ヒロキ様のご住所をお聞かせ願えますか」 「それは無理なお願いね。こんな早朝から人様の家に押しかけるような非常識な人に、うちの子を預けるわけにはいかないわ」 「――お言葉ですが、非常識というのは奥様のような方のことをいうのでは?」  「面白いことをいうわね」裕子の顔つきが一瞬で変わる。 「で、うちの子に仕事の話って、うちの子、働いてないわよ」 「フリーランスで提携してもらうだけですので、ご心配なく」 「あら、そんなことあの子しないわよ?」 「お話をすればきっとメリットにお気づきになるはずです」 「そう――契約できるといいわね」  裕子は女を少し待たせ、部屋からメモ紙を書いて、手渡した。「此処があの子の住所のはずよ」。 「理解が早くて助かります――流石元社長、と言うべきでしょうか」 「あら、貴女が今の社長の専属秘書? 黒田も形崩れしたわねー」  「裕子、どうしたこんな朝早くに」奥から旦那が顔を出す。 「いいえ、旧友が訪ねてきたから少しだけ話してたのよ。じゃあね、ユミさん」 「――では」 (ユミって旦那の元嫁の名前使っちゃったわ)  裕子は自分が思う以上に動揺していたらしい。 「・・・・・・俺の嫁さんは、元嫁に対してまだ何かわだかまりがあるので?」 「いいえ? 偶々同じ名前なのよ」  これ以上旦那が何かを聞いてくることは無かった。   「まだ寝れるぞ」  裕子の腰に手を回し、寝室へ促す。その手付きがいつもより優しくて、心底できた旦那だと実感した。   (ユミさんの分もヒロキと旦那のこと守るから、安心してくださいね) 「ん? どうした」  「ヒロキの連絡先知らない? 私は未だに削除されたままなのよ。そろそろ安否の連絡くらい欲しいじゃない」裕子は旦那に寄り添っていう。 「あれ? まだ知らなかったのか」 「ええ、これからも何となくで躱されていきそうだから、貴方から連絡してくださる?」 「――いいよ。そのかわり、その時は俺の隣にいてくれよ」 「・・・・・・ふふ、ありがとう」 「それで、早速なんだけど・・・・・・今からいう電話番号にかけて繋がったら、伝言として言ってほしいことがあるの」

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