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第69話

 「うぅ――頭痛い・・・・・・」頭の鈍痛で目が覚めて、のっそりと起き上がる。 「あ、おはようヒロキ。やっぱり二日酔いするよね」  スーツに身を包みだすディアゴがいて、慌てて視線を下に落とす。  自宅のベッドより狭く、あまつさえ、自身の身ぐるみが剥がされている。 「ちょ、え、え――ディ、アゴ・・・・・・? そのー」 「んー何?」 「昨日は美味しいお酒とご飯、ありがとう・・・・・・?」 「いいえー、どういたしまして!」 「お酒・・・・・・弱いのに、飲みすぎちゃってさ・・・・・・」 「あー――覚えてないの?」  ネクタイを締める手が止まり、ディアゴがちら、とこちらを見る。 「その格好をよく考えれば、分かると思うよ。昨日何があったかなんて」 「・・・・・・っ」 (やっぱり・・・・・・) 「ま、そんなことより、そこに薬置いてるから、ご飯食べてから飲んじゃって。俺は今から、仕事に行ってくるけど、仕事休むようなら、此処にいたままでいいから!」 「あ、うん。ありがとう」 「――そんなに俺と飲んだこと後悔してる?」 「い、いや!! そんなことない! むしろ、飲みすぎて迷惑かけてるんだから、反省してるよ」 「ふーん」  「日本人、ネガティブな表情はすごく自然と見せてくるから、分かりやすいけど、悲しいよね」ディアゴがいう。 「困ったように笑うんじゃなくて、相手のためにとりあえず、笑いなさい!!」  にか、と笑ってみせたディアゴはそのまま颯爽と出ていった。  家主のいない部屋に取り残された田淵は、裸体のまま呆然とする。 (・・・・・・相手のために、とりあえず笑う・・・・・・たしかに、ディアゴは何も悪いことしてない。酒に飲まれたのは僕のせいだ) 「でも・・・・・・」  毛布をそっと持ち上げれば、象徴が丸見えだ。  ――そういうことなのだと如実に伝えてくる裸体。  ほとほと困り果て、頭痛が悪化した。  その日、ディアゴの言葉に甘えるように、薬を拝借し横になると再び入眠していった。  幸い、今日は休日で、未だ黒田からの連絡は来ていない。  つまり、帰宅してもすぐに出ていって、田淵の所在を案ずるより仕事が目先にある、ということだ。  それだけで、脱力してしまって神経が図太くなり、問題を起こしたであろうベッドに入り込む。  真っ先に帰宅して黒田に弁解の余地を請うべきはずなのに。  もはや、弁解の余地はあるのか、疑問が残る頭の片隅から「ラムレーズン入りのチョコが食べたい」と不意に横入りしてきて、甘さを欲するまま寝た。

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