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第79話
「黒田君は、僕を許してるわけじゃないのに・・・・・・一体、何がしたいのさ・・・・・・ペナルティにしてはチェーンが細かったり、失禁したやつの処理をしたいだなんて言い出したり・・・・・・僕、もう分からないよ」
「・・・・・・俺も分からないよ。ヒロキさんから事情を聞きたいけど、ある程度黒なのは明確な上で、訳ありだって聞くのは――まだ聞きたくない、聞きたくない! だからと言って、距離を置くのも耐えられない・・・・・・」
促された脱衣を無視した状態のまま、話は続く。だが、黒田は脱衣しないことを許さないらしく、強制的にズボンを下ろした。足枷を外して。
「時間を置くのも同じ空間じゃなきゃ無理」
そして、膝をついたまま、黒田は尿がまだ垂れる内腿に舌を這わせる。
(僕を生殺しにしておくんだね。そんなところは触れるのに、それ以上は――)
「お風呂に入っておいで」。黒田はそれ以上の進展はなくいう。
田淵は言われるまま脱衣所へ向かう。その直後に黒田のスマホに着信が入ったらしい。余所行きの声ではないところを聞くと、身内からの電話のようだ。
それ以降の会話は、浴室に入ったので聞こえなくなる。
シャワーを頭からかける。
温度の低い冷水に近い水で頭を冷やそうとした。
「・・・・・・」
すると、予告なく黒田が入ってきた。
「うわっ! 冷た!! ヒロキさん、風邪引くよ!」飛沫が黒田にかかって冷たさに驚く。
「・・・・・・?」
「っもう、貸して!」
シャワーを取り上げて温度を上げる。
人肌に優しい温度になってから、再度田淵にかけて冷え切った身体を温めた。ついでに、抱きしめてさらに温める速度を速めようとする。
「ヒロキさん、俺のせいで振り回されて、辛いよね・・・・・・」
「・・・・・・そんなこと言える立場じゃないから」
「・・・・・・」
「でも――やっぱり僕、黒田君が好きだよ・・・・・・」
流れていく湯と一緒に、しっとりと涙も流れていく。
「好き、ごめんなさいぃ!」
抱き締め返す腕の力は昨夜と同様、黒田の皮膚を裂かんばかりに縋り付く。
「出来心なんかじゃなくて・・・・・・本当は、泥酔して、記憶がなくなるまで飲んじゃって」
「・・・・・・それで、ディアゴはなんて言ってたの?」
「僕、起きたら裸だったし――ディアゴも否定はしなかったから」
「なんて言ってたの?」
「っ、ぅその格好をよく考えれば、分かると思うって」
「明言せずにいうなんて、日本人らしいことしてくれるな――反吐が出るくらい、見覚えのある常套句過ぎて・・・・・・ヒロキさん」
黒田は爪を立てられながらむしるようなハグに文句一つ言わず、後ろ手に頭を撫でた。「はぁ。俺、人生で一番安堵してる・・・・・・これで少しはヒロキさんの話を聞いてあげられそうだよ」。
「ほんと?」
「うん、でもその前に、仲直りえっち、しませんか?」
その誘いに明らかに、表情を明点させた田淵はだみ声で答えた。「したい!!」。
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