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第4話

悔しい。 唇を噛み締めグラスをより強く握る。 実は彼氏と別れたのは今日ではない。 1ヶ月ほど前の話である。 ただ、今日は見てしまったのだ。 一一元彼が、新しい恋人に向かって、見たこともないような慈愛に溢れた顔で笑っていたのを。 俺にはそんな顔見せてくれたこと無かった。 思い出してみても、少し眉根を寄せてこちらから目を逸らす横顔や、辛そうに唇を噛み締める顔しか浮かばない。 その事実を目の当たりにして、とても泣きたくなるような、胸が押し潰されるような、ぐちゃぐちゃに頭をかき混ぜられたような気分がした。 なにもかも酔って忘れてしまいたいと思った。

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