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第5話

ぐい、とグラスを思い切り傾け、ごくごくと喉を鳴らしてアルコールを流し込む。 ほわほわとして頭に酒が回る感覚がとても好きだった。 テーブルに置いた氷しか入っていない冷たいグラスを両手で握り、ぽおっと遠くを見つめる。 次は何を飲もうか、と思考を回らせ始めた時だった。 一一 「隣、失礼していい?」 低すぎず、高すぎない、心地よい声がきこえた。 コト、とグラスをテーブルに置く音がして、ハッとしたように視線を隣に向けると、先程対角に座っていた男性が移動してきていた。 「スクリュードライバー、飲める?」 そっと空のグラスから手を外され、新たに渡されたグラスを受け取る。 ぽやぽやとした気持ちのまま、男性を見つめると、ふわりと微笑まれる。 「…ありがとう、」 綺麗な顔だなあ、と全く関係ないことを考えつつこくりと1口喉に流し込むと、口当たりのいい味が広がる。 「美味しい、」 「ほんと?良かった」 思わず、といったふうに呟くとにっこりと笑いながら頬を撫でられた。 ひんやりとした手のひらが火照った頬に気持ちがよく、すり、と甘えるように擦り付けると、驚いたように目を見開いた男性がにいっと口角を上げた。 「カクテルの意味、知ってる?」

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