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第11話(男side)
「んへへ、お兄さんいけめんですねぇ」
ぱちりと目を覚ました彼は、俺の顔を見るなりそう言った。ありがとう、と返事しつつ俺も彼を見る。
へにょりと笑みを浮かべてから、ずっとご機嫌なのはとても可愛いと思うが、バーテンダーの視線が痛い。
確かにスクリュードライバーでとどめを刺したのは俺かもしれないが、元々酔っていたようだったから俺ばかりにそんな視線を向けないで欲しい。
そう思い、苦笑いを浮かべていると、くいと俺の着ているスーツの袖が引かれた。
「お兄さん、なんて名前?」
「晴だよ。神田 晴 。」
「俺はね、伊原 優。ねぇ、晴さん、きいて?」
それから俺は、優の話をきいた。
自分がゲイであること。
魅力を感じてもらう為に日々やっていたこと。
ーー気付けば、みんな離れていたということ。
「俺ね、いつも振られちゃうの。何がだめだったんだろうね。」
そういって俺に笑いかけた彼の笑顔が、消えてしまいそうで。痛々しくて。
思わず抱きしめた。
「泣いていいよ」
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