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第22話

「え?」 「うん…と言っても、俺が働いてるのは支社だけど。ほら、ね?」 俺も自分の鞄から名刺を取り出し、晴さんに渡す。 KHホールディングス 〇〇支社 営業部 伊原 優 「あ、本当だ。でもうちの中でもかなり上位の会社だから、もしかすると会ってたかもね」 何回か様子見に行ってたし。となんでもないように言う晴さんだけど、俺は正直心臓バクバクいってる。 だって、自分の会社のさらに上のところの社長さんと、お、お付き合いしてるとか、やばくない? でも、正直納得した。 ハンバーグを切る時のナイフとフォークの使い方とか、ラフな格好してるのにめちゃめちゃかっこいいし、ブランド物の時計もしてる。晴さんの家のインテリアもオシャレで、ベッドも大きかったし。 「優は、何歳?」 「あ、え…?に、23…」 ずっと考え込んでいたからちょっと返事が遅れたけど、なんてことないように晴さんは続ける。 「誕生日はいつ?」 「…5月7日、」 「じゃああともう少しだね。お祝い考えておくよ」 「えっ、!いや、いいよ!じゃなくて、いいです…」 取締役、と考えると思わず恐縮してしまい、つい敬語になる。すると、少し困ったように眉を下げて微笑んだ。 「俺は、恋人に敬語とか使われたくないんだけどな。むしろ、晴さんじゃなくて晴でもいいよ?うん、そうしようか、ほら、『晴』って呼んで?」 晴さんの悲しげな表情におろおろしていると、さらに追加で爆弾が投下された。ぐい、と顔を近づけて、キスが出来そうなくらい近くで「ほら、」と急かされる。 俺は吃驚して、離れようと晴さんの肩を押したけれど、それより強い力で後頭部を抑えられて動けない。 じいっと近くで見つめられて、ドキドキと鼓動が早くなる。けれどからかうような笑みが口元に浮かんでいるのに気がついて、思わずぷいっと顔を背けた。 そして、小さな声で呟く。 「い、今は勘弁して…いつか、いうから、」 ふっと晴さんが笑ったような声がして、ちらりとみてみると、「約束。」とすごく嬉しそうな顔で俺を見ていたから、また胸が高鳴った。

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