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第25話
「晴さん、あのさ、」
「ん?」
「来てもいい日いつ?」
ソファに座ってさっき貰ったばかりの新品の鍵を目の前に掲げ、飽きることなくずっと見ながらそう問いかけた。なんでもない雰囲気を装っているが、内心は駄目って言われたらどうしよう、と心臓がバクバクしてる。
「休みの前日なら、いつでも来ていいよ。まあ、此処に引っ越してきて毎日ここから出勤でも俺は全然いいけどね」
その言葉に俺はビクッとする。
同棲は、転がり込む方も、受け入れる方も両方したことがあったが、楽しいのは最初だけだった。数ヶ月もすれば互いの嫌なところが目につくようになってきて、顔を合わせれば喧嘩をして精神的にも疲れきってしまい、別れることが多かった。
正直、もう恋愛するなっていうことなのかな、って前回の事で思っていた。
今回の晴さんで最後にしようと決めてしまっていたので、早々に別れる、なんてことになってしまったら既に軽く依存している俺にとってはその後の日々は地獄でしかない。
「優?」
晴さんの声に、ハッと思考の海から意識が浮上する。
返事をなかなかしなかったからか、少し心配そうな顔をした晴さんが俺の隣にいつの間にか座っていた。
「あ、いや、なんでもないよ。じゃあ毎週来ちゃおうかな」
にぱっと安心させるために思い切り笑顔を浮かべて腰に抱きつく。
そんな俺の感情を察してくれたのか、気になっているような表情をしつつも、ふぅと息を吐いて俺の頭を撫でてくれる。
ごめんね、晴さん。
いつか、俺の勇気が溜まったら、一緒に住みたいっていうから待ってて。
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