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第31話

ごめん、と繰り返し呟き続ける晴さんの顔をみようとするけれど、腕を下ろしたときに出来た隙間も既に無くなっていて、びくともしないので見れなかった。 「俺がちゃんとみていれば…ほんとにごめん」 そう言われて、少しおろおろしていた気持ちがすんとしずまる。あれ、ちょっと待て、と口元がひくついた。 「晴さん、それ……俺の事子供扱いしてる?」 少し眉間に皺を寄せつつ問いかけると、え?という顔をしたまま晴さんが顔を上げた。 きょとんとした顔に、俺まできょとんとなる。 さっきまでの少しシリアスな雰囲気はどこかへ消え、お互いに少し間の抜けた表情で見つめ合う。 「…なんていった?」 「俺のこと子供扱いしてる?って。目を離してごめんって、子供に言う言葉じゃん!」 「………確かに」 充分過ぎるほど間をあけた晴さんは、神妙な顔で頷いた。なんだか、阿呆らしくなってきて、ふは、と吹き出してしまった。 すると晴さんも釣られて笑い始めたので、なんだか不安な気持ちは吹き飛んでしまっていた。 「…って、あ!晴さん、もう7時前だよ!はやく作って食べないと!」 ふと視界に入った時計をみて、俺は声をあげる。そうだな、と立ち上がった晴さんをみて、俺も手伝う!と立ち上がる。 「いい。優は座ってて。」 有無を言わさぬ雰囲気でにっこりと微笑みながら肩に手を置かれ、そう言われたので俺は渋々大人しくすることにした。 同時に、俺に«料理禁止令»が晴さんから渡された。 今思えば、このとき、もっと晴さんの表情を見ているべきだったんだと思う。

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