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第34話
俺はもやもやとした気持ちを抱えながら、表面上は笑みを浮かべた。
晴さんは、なんとなく俺の笑みの裏側を察しているらしかったけれど、なんでかは分からないっぽい。
つまり、晴さんのなかでは、普段通りということ。夫婦箸の片割れを使うことも、2つずつある食器も。
俺が使わせてもらっているこの箸は、きっと来客用だ。似たような色の箸が他にいくつかあったから。
あの紅色の箸は誰が使うんだろう。お揃いの食器、お揃いの箸で、笑い合う晴さんと誰か。
そんな光景が、自然に思い描くことが出来た自分にも、笑えてくる。
あんなに美味しそうと思っていた晴さん手作りのご飯は、もう味がしなかった。
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