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第35話
なんとか食べ終え、ご馳走様でした、と手を合わせて呟く。
すると少しほっとしたような表情でお粗末さまでした、と返ってきた。
どうして晴さんがそんな顔してるの、と一瞬思うけれど、多分食事中の会話が集中出来ていなかっただろう、とすぐに思い至る。
正直にいうと、こうして顔を合わせて、喋るだけでも神経をすり減らしているような気がする。そんな状況が嫌で、自分の食器を持ち上げてキッチンの方へ逃げた。
けれどここはアイランドキッチンで、開放的なので普通にダイニングテーブルからこちらが見える。なので晴さんも食器を持ってくるのが普通に分かってしまい、むかむかとした。
ご飯を待つまでは、晴さんの様子が良く見えて嬉しかったのに、今はイライラしてしまうなんて、自分勝手だな、と思う。
そんな自分勝手な自身にもイライラして、こちらをちらちらと伺ってくる晴さんの態度にもイライラして、爆発してしまいそうだった。
少し離れたい、と思った。
「ねぇ晴さん、お風呂入ってもいい?」
なるべくにこやかに笑みを浮かべてそういうと、笑みを返される。
「もうすぐ沸くから、もう入ってもいいよ」
そういわれるや否や、ありがとうと笑みを深めながら家から持ってきた着替えを持って風呂場へと向かう。
ぱたん、と扉を閉めると、ずるずると扉に持たれながらしゃがみこんでため息をついた。
そして、声を殺しながら泣いた。
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