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第38話
「結構大変だったな、毎日やってんの?」
「そうだね、やらなかったら次の日足パンパンになっちゃうし…」
そんなに?と少しびっくりしたような表情をする晴さんに、くす、と笑みを零す。すると、ぐい、と肩を引き寄せられ、晴さんにもたれるような体勢になった。
驚いて晴さんを見上げると、少し拗ねたような表情をしていて、どうしたんだろうと首を傾げる。
「優、なんか夕食のときから変だったから…」
俺なんかした?と、そう言われ、どきっとする。
言うべきか言わないべきか、迷った。
どうしよう、と支線を彷徨わせる。少しでも時間を稼ごうと、えーっと、と呟く。
その間も、晴さんはおれをじいっと見つめていて、逃げられない、と思った。
「…素直に答えてくれる?」
「うん、約束する」
ぎゅっと手を握られる。その手は温かくて、その時初めて俺の手が緊張で冷えて震えていたことに気がついた。
「……め、」
「め?」
「夫婦箸、の紅色のやつは、誰のもの?」
ぴし、と晴さんが固まる音がした気がした。
自分の顔が歪んでいく。
晴さんの手も冷たくなる。
「晴さんの1番は、誰?」
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