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第39話
「優、黙っててごめん」
「…なにを?」
喉がカラカラに乾いていて、声が出ない。
やっとの思いで唾液を飲み込んで、ようやく出たと思った声は自分が思っていた以上に強ばっていて、やっぱりその先を聞くのは怖いと思った。
晴さんは、俺から手を離し、指の先が白くなるほど強く拳を握りしめていた。顔面も蒼白で、今にも倒れてしまうんじゃないか、と心配になるほどだった。
けれど、その心配を口に出すような余裕は俺にもない。噛み締められている唇から、次に出てくるのはどんなナイフか、そのナイフが心に刺さったときどうするか、という自分のことしか考えられなかった。
ゆっくりと唇が開く。
「俺の一番は、嫁だ」
目の前が真っ暗になった。
全ての音が遠のいていくような気がした。それ以上聞きたくないと思った。既に自分から聞いたことだという事すら忘れていた。
不倫?俺のことは遊び?じゃあなんで声を掛けたんだよ
つう、と目から雫が零れ落ちて、頬を伝う。空虚な涙だった。世界から色が消えるような気がした。
「優!!!」
肩をガっと力強く握られ虚ろな瞳で見つめる。
「お願いだから最後まで聞いてくれ」
ふ、と笑みが零れた。
「なにを?」
手を掴まれ立つよう促される。大人しく従って立ち上がると、鍵のかかった部屋の前まで連れてこられた。
晴さんがポケットから鍵を取りだし、俺に開けるよう言ってきたので、震える手を抑えながらゆっくりと開く。
そして、視界に入ったものに、目を見開いた。
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