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更に1ヶ月経った8月、俺はようやく纏まった休日がとれて、久しぶりにゆっくりと一緒に過ごそうと思っていた。
けれど、璃々子は毎日8時半に家を出て7時に帰る、という生活を続けていた。
俺はいつも8時前には家を出て帰宅ははやくて9時頃だったので知らなかった。
なにをしているのか尋ねても、あやふやに微笑んで誤魔化された。
それから更にしばらくして、8月が終わる頃。つまり、俺が休みになってからずっと毎日同じ時間に出掛けていく璃々子を不審に思い、少し探偵に依頼してつけさせてみた。
ゆっくりと歩いて駅にいき、3つ先の駅で降りた璃々子が入っていったのは俺の本邸、つまり俺の実家だった。
その報告を受けた日の夜、俺は耐えきれなくて思わず聞いた。
「どうして毎日俺の実家に行ってるんだ?」
それをきいたときの璃々子の顔を、俺は今でもはっきりと思い出せる。きっと一生忘れることは無いだろう、と言えるくらい衝撃的だった。
不安と、絶望と、安堵と、恐怖と、悲痛が入り交じった表情だった。震えていた。そして遂に、顔を覆って泣き出した。
父親だ、と思った。
クソ親父が、と心の中で悪態をつくも、何ヶ月も生活を共にしている璃々子の変化に気づいたのに、なぜそこで問い詰めなかったのだろうか、という自責の念が俺の胸を締め付けた。
俺が不甲斐ないばかりに、ごめん、と震える肩を抱きしめる。
そこで、余りの細さに息を飲んだ。
こんなにガリガリじゃなかったはず、と璃々子の服を捲る。
焦った表情ですぐに服を戻した璃々子だったが、俺は見てしまった。
少し古くなったものから、最近できたと思われる瘡蓋になっているものまで、何十本ものリストカットの跡が、骨と皮だけの細い手首にあった。
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