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、
自宅に着き、扉に手をかける。
すんなり開くとおもっていたが、予想に反してガチリ、と鍵の当たる音がした。
あれ?と首を傾げるも、まぁ用心深いのはいいことだよな、と鍵を取りだし扉を開ける。
しん、と物音一つしない部屋に、ただいま、と声を掛けつつ入っていく。
「璃々子?」
怪しみながらリビングへと繋がるドアを開けると、電気すらついておらず、真っ暗だった。
パチ、と電気をつけるも、いま見渡せる範囲内には誰もいない。
寝てるのかと思い寝室の扉を開けたものの、誰もおらず、どうしたんだと思いながらリビングに戻ろうと歩き出すと、ふと途中にあるキッチンが目に入った。
そして、そこで固まる。
血に濡れた包丁と、カーペットがあった。
まさか、と急いで璃々子の携帯に電話をかける。
『お掛けになった電話は、電源が入っていないか一一』
聞きなれた機械音がして、舌打ちを打ちながら切る。
先程の母との会話が頭の中をよぎり、父に電話をかける。
驚いたことに、ワンコールで出た。
『なんだ』
「母さんは?」
『お前が帰ってすぐ出ていった』
そう言われて頭を抱える。
「璃々子がいない。どこに行ったか知らないか?」
耳元から息を飲む音がした。
『知らん。なにか連絡が入り次第伝えてやるから、待ってろ』
そう言われ電話を切る。帰ってくることを信じて、携帯を力強く握りしめた。
けれど、その日はとうとう父からの電話も、璃々子が帰ってくることもなかった。
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