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、
午前5時のことだった。ピリリ…と携帯が着信を知らせる。
璃々子か、はたまた父か、どちらでもいいからなにか教えてくれ、という思いを込めて電話に出る。
「もしもし」
一晩中飲まず食わずでいた俺の喉は、乾燥し、張り付いていたらしく、カスカスだった。
『こちら、神田 晴さんのお電話でお間違いないでしょうか?』
知らない男性の声だった。冷や汗が背筋を伝う。
「そうですが」
『神田 璃々子さんが先程緊急搬送されてきました。今すぐこちらに来れますか?場所は一一』
段々と耳元の声が遠くなっていく。気を失うかとさえ思った。むしろ、このまま気を失ってしまいたかった。
気だるい身体を叩き起して立ち上がる。少しの安堵と、大きな不安。
そうだ、父にも連絡を、と思い電話を掛けながら家を飛び出した。
***
赤いランプが光っている。じっと椅子に座っていることが出来ず、扉の前をうろうろとしていると、パタパタと走ってくる足音がして、父が顔を出した。
「どんな状況だ」
「急に飛び出してトラックに轢かれたらしい。今なかにいる」
「そうか」
母さんは、と聞こうとしてやめる。璃々子の事故に関わっているかどうかは今のところ分からないが、顔をみたら殴ってしまうのではないか、と思っていたからだ。
沈黙が流れる。
一分一秒がとても長く感じて、イライラしてきた。
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