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今回は短めですが次回が長いので許してください。
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それから2週間、俺は上司に頼み込んで璃々子の面会時間である12〜15時の間休憩として時間を取らせてもらうようになり通い続けた。
上司や同期は心配そうにこちらをみていたが、入って数ヶ月の新人の俺に有給なんてなくてその分サービス残業をするしかなかった。一部の俺を嫌っている人達は何をしてるんだと俺のことを鼻で笑っていたけれど、そんなことはどうでも良かった。俺にとって一番重要なのは璃々子だったから。
璃々子が入院して1週間目の日曜日、俺は父に呼ばれ本邸に来ていた。
応接室に入ると、父と母が向かい合って無言で座っていた。「座りなさい」と言われ、すぐに父の隣に座る。母はそのことに驚いていたけれど、父はなんの反応も示さなかった。
今の俺にとって、母は母ではない。敵だ。
正直、今となっては幼い頃俺を慰めてくれた母の顔を思い出すことができなくなっていた。
長い長い沈黙の後、父がゆっくりと動き、一枚の薄い紙をテーブルに乗せた。
自分の手元をじっとみていた俺はそっと視線を上げて紙を盗み見る。
驚いて、声を失った。
母が璃々子へと与えた危害の証拠、もしくは離婚届だと思っていたけれど、どちらも違っていたからだ。
ーーそれは、婚姻届だった。
これには流石に驚いたのか、母の顔から表情が消えている。
「ど、どうして」
わなわなと震えた声で母が問いかける。
父から語られたのは衝撃の事実だった。
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